一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった

キミと駆け抜けたアオハルDays
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徹夜のリハ

徹夜のリハ

公開日時: 2021年5月31日(月) 01:21
文字数:1,928

〈来蘭side〉

「あ、ねぇ、ガレージにはもう他の人たち居ない?」

優輝くんにコソッと聞いた。

「Roseyのメンバーたちのこと?」

「ロージー?」

「陽介のアニキがやってるバンドのことだよ」

「じゃああの長髪の人は、そのバンドのメンバーなんだね...拓海...とかって言ってたかなそうちゃん...」

「あぁ拓海さんね、Roseyのボーカルだよ。拓海さんがどうかしたの?さっき2人で話してたよね?」

あの人とさっきした会話を、優輝くんに話して聞かせたら、優輝くんはカンカンに怒って

「は?あいつふざけんなよ!いつもなんだか斜に構えてて、いけ好かないヤツだとは思っていたけど、完全に頭にきた!!」

その勢いのまま、陽介くんの所に走って行ってしまった...

ふとスマホを見ると、加奈からメッセージが来ていた。時間を見ると20時を過ぎていた...

メッセージを確認すると、帰りの遅いわたしを心配する内容だった。

いけない、加奈に連絡しないと!

加奈に連絡して、これから朝までガレージでバンドのリハになりそうだと伝えた。

通話を切る時の、加奈の寂しそうな声が耳に残った...


加奈との電話を終えてガレージに入ると、駆け寄って来る陽介くん。

「優輝に聞いたよ、拓海さんのこと...あの人ちょっとクセがあってアニキとも度々ぶつかってんだよ...ボーカリストとしてはすげぇんだけど、人格に難アリで...嫌な思いさせてごめんな来蘭ちゃん」

「陽介くんが謝ることないって...」

「アニキによく言っておくから!またなんか変な事言ってきたらマジで俺たちが許さねぇから!!

うちの『歌姫』傷つけんじゃねーよ!って言ってやるからな!」

「やだ、なにその『歌姫』って、恥ずかしいよー」

「あれ?さっき言ってなかったか?『自信のない自分は捨てる!』って!

いい?来蘭ちゃんはうちの大事な『歌姫』なの!本気でやるんだろ?もうそこはそろそろ自覚して?」

さすがはそうちゃんと一緒にバレー部でやってきた副キャプテン。陽介くんは言うべき事をビシッと言ってくれる所がある。これからも陽介くんにこうやって姿勢を正されるのだろうな。

優輝くんとそうちゃんは、曲の構成とテンポ感について話し合っていた。

わたしの書いた詞が、1番と2番で『暗と明』にしたのを、より演奏面でも表現しようということになり、テンポやリズム感も変えることにした。

「とにかくやってみよう!」

そうちゃんのカウントが響く

何度も何度も演奏を続けた。

気になる箇所は、止めてはやり直した。

だいぶ納得する形になってきたところで、優輝くんの録音機材で何テイクか1発録りをしたのを、休憩がてら聞いてみることにした。

PAに機材を繋いで、録った音を流す。

わたしはバーカウンターの方で乾いた喉を潤す3人から離れて、ソファに身体を沈めた...


〈奏太side〉

バーカウンターの椅子に腰掛けて、ミネラルウォーターを飲みながら、スピーカーから流れる自分達の演奏に耳を傾けていた。

時計は深夜の2時を指していた...

に、2時!?

来蘭大丈夫か?

来蘭の姿を探す...

来蘭は向こう側のソファに1人で座っていた。

来蘭に近づこうとすると、陽介と優輝にパーカーのフードをぐいっと引っ張られた。

(「寝てる」)

(「来蘭ちゃん寝ちゃってる」)

男3人で、そーっとソファで眠る来蘭の側に近づく...

「天使だな...」

思わず呟いてしまった俺に続いて

「うん」

「天使だな」

陽介も優輝も呟く

「うちの『姫』だからな」

と優輝が言うと

「姫って言うと、まだ恥ずかしがるけどな」

陽介がクスっと笑う

「輝かせてやりたいよな、天使みたいな寝顔のうちの『歌姫』をさ...」

と俺が言うと、優輝も陽介も頷いた。

「さすがに俺らも眠いな...ソファひとつだしな...優輝俺ん家来いよ、ちょっと寝ようぜー」

陽介が優輝を連れて帰ってった。

連れてくか...

いわゆる「お姫様抱っこ」をするしかないなと、寝ている来蘭の背中に手を回したところで目を覚ましてしまった...

「んん...」

寝ぼけて抱きついてきた...

これ、手を出さないで居ろってのは拷問だぞ...

来蘭が首に手を回してくれたから、そのまま抱き上げて家まで運んで、俺のベッドに降ろして寝かせた。

可愛らしい寝息を立てて眠る来蘭の横に俺も横になって、しばらく寝顔を見ていた...

kissくらいはいいよな?

そっと唇に触れるだけのkissをして、すぐに離れて、来蘭の横に仰向けになって天井を見た。

すると寝返りをうった来蘭が、俺を抱き枕と勘違いでもしたのかのように

「そうちゃぁん...」

と言いながら抱きついてきた...

「来蘭...」

抱きしめ返して俺も名を呼んだ...

「てっぺん取ろうな...てっぺん取れたら〈ひとつ〉になろうな...」







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