わたしの病室の前で、そうちゃんが見知らぬ男性と話していた...
「そうちゃん?その方誰?」
「赤井来蘭さんですね?初めまして私、弁護士の梶原と申します。」
「来蘭の弁護をしてくださる方だよ。
被害者側である来蘭にも、加害者側にも弁護士さんが居て、双方の弁護士さん同士で、これから話し合いをして行くことになるんだよ」
「そうか、これは傷害事件なんだもんね...」
それから病室の方で、梶原さんからこれからの話しと共に、加害者の方の話しと事件への経緯を聞かされた。
加害者の方は、あの拓海さんに気まぐれに何度か抱かれたファンの子で、拓海さんの子を身ごもっていて、妊娠したことを拓海さんに伝えにあの日ライブに足を運び、あの場にいたのだそうだ...
拓海さんの身勝手な、あんな演出を目の当たりにして、衝動的にわたしを切り付けた...という経緯だと聞いて、心が痛んだ...
「梶原さん、その加害者の方の体調は今大丈夫なんですか?妊娠なさってるんでしょう?」
「彼女は今、留置所に勾留されている状況です。」
「そんな身体で留置所に?彼女を釈放してあげるにはどうしたらいいの?」
「保釈金というものを支払えば釈放はされますが...」
「それ、拓海が支払うべきじゃねーの?」
黙って聞いてたそうちゃんが口を開いた。
「うん、わたしもそう思う。彼女も被害者じゃないですか!わたし、彼女を犯罪者にはさせたくないです。そして拓海さんに彼女と彼女のお腹の子を幸せにしてあげて欲しい」
「いや君、その手、障害を負うことになったんだろう?そんな傷を負わされたのに被害届を取り下げるのか?そうゆうことなら、示談交渉ということになるよ?」
「その辺のことはわからないから、梶原さんよろしくお願いします。」
「わかりました。あなたに不利益にならぬよう、あちら側と話し合いをしてきます。
しかしまぁ、あなた、障害を負わされたのに許すなんて...」
「右手を失ったって左手があるんだから!わたしは大丈夫!」
「たいした人だなぁ」
と言う梶原さんにそうちゃんが
「俺の彼女なんでね」
と、自慢げに言った。
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