「わたしは普通の以下も以下、下の下だよ。そこはあってる。でも、チヤホヤなんかされてない!
一緒に住んでるヘアメイク志望の子にヘアメイクしてもらうようになってから、周りが騒がしくなって戸惑ってるけど、勘違いなんてこれっぽっちもしてない!」
凛として言ってやった。
笑い転げてた身を起こし、ソファの下のラグにあぐらをかいて座って、じっとわたしを見上げる彼
「あんた面白いね」
肉食獣が獲物を狙うような目をして彼が言う...
そして...
「奏太から奪っていい?」
そう言って彼はニヤリとした。
「あなたにわたしは奪えない!」
ピシャりと言い放ってソファを離れた。
スタンドに立て掛けておいた自分のベースをケースにしまい、両肩に背負って、無言でガレージを出た。
苛立ちながら早足で歩いていると、息を切らしてそうちゃんが追いかけてきた。
「来蘭!来蘭!!待って!どうしたんだよ」
そうちゃんに手を掴まれても、苛立ちは収まらずに、唇を噛んだ...
「とにかく、戻ろう?」
というそうちゃんに
「いや!ガレージには戻らない!あの人が居るなら戻らない!」
「あの人?」
「長髪をハーフアップしてる、切れ長の目のあの人...」
「拓海さんのこと?拓海さんになんかされたの?」
「.......」
「とにかくおいで...ガレージには行かないから、ほら」
そうちゃんに手を引かれて、連れて行かれるままに後ろを歩いていた。
ガレージを通り越した先の、海に面した素敵な家のドアを開けるそうちゃん
「どうぞ、入って来蘭、ここ俺ん家だから」
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