魔族令嬢の奴隷にされたけど、面白半分に付与された外れスキル【豚化】を活用して反逆します

三門鉄狼
三門鉄狼

魔族に変装して城を探索します

公開日時: 2020年9月29日(火) 20:03
文字数:1,422

「おい」


城内をうろついていると、兵士に呼び止められた。


「へ、へい」


俺は振り返り返事をする。


「料理人がこんなところでなにをしている」


「すいやせん。実は……」


俺はコック帽で顔を隠しながら、考えておいた言い訳を告げる。


「明日の宴会で使う食材の鶏が逃げ出しまして、手分けして探しているところでございやす」


「なにをやっているんだ、ばか」


「へえ、申し訳ございやせん」


へりくだって頭を下げる。


しかし全然気づかれないな。


そう、俺はさっき豚化して気絶させた料理人の服を奪い取ったのだ。


魔族の城を探るなら、魔族のフリをしてしまえばいいってわけ。

我ながらいい考えだ。


「そ、それじゃ急ぎますんで」


俺は頭をさげると、その場を立ち去ろうとした。


「待て」


兵士が呼び止めてくる。


「お前、どうして顔を隠している」


「へ、へい。それはその」


「ちょっと顔を見せてみろ」


「……わかりやした」


俺は覚悟を決めてコック帽をあげ、顔の一部を見せる。


「うっ」


思わず呻き声を上げる兵士。


そこには、黒い肌がべっとりと血で汚れた頬があるのだった。


「申し訳ございやせん。さっき豚をやったときに血が飛んだのがそのままでやして。お見苦しいと思い隠しておりやした」


「も、もういい。さっさといけ!」


「へい。失礼いたしやす」


俺はそそくさと立ち去る。鶏を探しているフリも忘れない。


実は料理人に化けた後調理場に立ち寄ったのだ。

黒い肌は炭、血は鶏のものだ。

念のため塗りたくっておいてよかったぜ。


その後も何度か遭遇した兵士に同じ言い訳をしながら、俺は城内を進んでいく。


やがて、それまでより内装の豪華なエリアに入った。

毛足の長い絨毯が敷かれ、周りには調度品が並んでいる。


この辺りに城主であるラッシュがいるはずだ。


ハピネも一緒にいるだろうか?


「おい、なにをしている」


キョロキョロしていると、また兵士に声をかけられた。


「へい、実は――」


もう言い慣れてきた言い訳をすらすら口にする。


しかし今度はさっきまでと同じとはいかなかった。


「ここは本丸だぞ。どんな事情があるにしろ、ラッシュ様の許可なく立ち入ることは許されない」


げ、そうだったのか。


「す、すいやせん。うっかりしてて……すぐ出ていきやす」


「待てっ」


逃げるように立ち去ろうとする俺に、問答無用で槍を突き出してくる兵士。


うわ、危ねえな!


俺はとっさに避けたが、槍はコック帽を貫いた。顔がさらされてしまう。


全体を見られれば炭と血の偽装は簡単に見ぬかれるし、なにより俺の頭には魔族特有の角がない。


「貴様! 脱走したという人間かっ」


「くそっ!」


俺は全力で逃げて廊下の角を曲がる。


そこで豚化して、壺を飾ってある台の下の隙間に隠れた。


「逃げ足が速いな。どこに行ったっ」


兵士はそのまま廊下を通り過ぎていった。


ふー……豚化してもサイズはそれほど変わらないけど、体型が全然違うからな。


まさかこんなところにいるとは思わなかったんだろう。


いざとなったらオーク化して兵士をぶっ倒すって手もあるだろうが、できれば騒ぎは起こしたくない。


さて……さっきの兵士がほかの奴らに伝えて、捜索の手が厳しくなる前にハピネを見つけないと。


「まったく、バカなやつだな、お前は」


ふと、俺の耳に声が飛び込んできた。


一瞬、俺に話しかけてきたのかとびっくりしたが、違うようだ。


声は、近くの扉の向こうから聞こえてきた。


俺は人に戻ると、そちらへ向かう。


扉は半開きで、中の様子が窺える。


そっと覗き見ると、そこにはラッシュとハピネの姿があった。

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