真城さんと喧嘩してしまった。喧嘩するほどの仲にはなったと思えば嬉しいかもしれないけど、喧嘩は嫌いだ。思い出したくないことを思い出してしまう。
私は憂鬱な気分で住宅街を歩き、黒い屋根の家の戸を開く。
「おかえりなさ……ってどうしたの?まさかまた……?」
扉が開いた音に気付いて玄関に来たお母さんは私の顔を見て不安気な顔をする。
「ううん、大丈夫。ちょっと喧嘩しちゃっただけ。あ、でも前みたいなのじゃないから!」
「は、祝ちゃんがそう言うなら良いんだけど……」
「ホントに大丈夫だって!……この匂い、今日はカレー?」
私は笑顔で誤魔化しつつ、話題をそらす。ホントに大丈夫だし、余計に心配かけたくないし。
「うん、ちょっと人参が多く余っちゃってたからね。まだ出来るまでかかるから先お風呂入ってきなさい」
「はーい」
湯船に浸かりながら今日のことを思い出す。
(……向きになっちゃってたよね。でもあんな言い方はないと思う、うん。でもでも仲直りしたいし……はぁ……)
この後も悩み続け、気がついたらベットで眠りについていた。
私には友達の中でもとりわけ仲が良い二人がいるわけだが。
「二人には心配かけさせないようにしないとね……友達だし」
私はいつもの笑顔を作りつつ、教室のドアを開ける。
「お、はふっちおはよー」
「おはおはー……って元気ないじゃん、どしたの」
朝、教室に入ると友人たちに瞬でバレました。
「はふっちが!?」
「喧嘩ぁ!?」
「う、うん……」
驚愕しつつ顔を近づけてきた二人。こっちが驚いちゃった。二人は落ち着いたのか、「でもどうして?」と理由を聞いてきた。
「えっとね……同じことをしたいのに、考え方の違いでぶつかっちゃって……」
「まぁ真面目だもんねー」
「あーしらはそこそこ気があってるけど、見た目の割に固いもんねー」
「うぐっ……」
笑いながら痛いところをついてくる二人。でも、二人はこんな私と仲良くしてくれるぐらいに優しいわけで。
「自分が悪いって思ってるなら謝ればいいんじゃない?」
「そーそー。ま、相手がそれで謝ってこなかったら縁切ったりすればいーじゃん」
「……そうだね。縁切るかどうかは置いといて、取り敢えず謝ってくる!」
難しく考えなくても良かったんだ。喧嘩したら謝る、それだけだよね。
まぁ、これから授業だからまた後でだけどね!
――ところで一方、炎禍たちは……。
「のぅ、響《ひびき》よ」
「どうしたの、炎禍さん」
炎禍は響という名の鬼の少年に話しかける。
「あの二人を喧嘩させたのは、お主か?」
「うん、こうしたら滅ぼしやすいでしょ?」
「……そうか」
それを聞いた炎禍は洞窟から出る。
「あ、魔法少女を倒しに行くの?いってらっしゃい」
「……」
炎禍はそのまま黙って出ていった。
(喧嘩している奴に共通の敵をもたせたら意気投合してしまう。だから、妾が今やるべきことは……)
―――再び祝たちに戻る。
「あの、真城さん」
「……なんですか」
やすみじかんになったので私が話しかけると、真城さんは不機嫌そうに窓の外に体を向け、目線だけこちらに寄せる。
「えと、昨日はホントにごめんない。言い過ぎました」
「……はぁ。謝るのはこういう教室とかじゃなくて、また放課後に嬉々さんのところとかでやってほしいんだけど。ほら、周り見て」
「あっ……」
真城さんに言われて周りを見てみれば「真城のやつ、柚来さんに謝らせてんのか?」とか「柚来さんが話しかけてるのにあんな態度って、立場わかってんのかな。生意気だな」とか言ってる人がたくさんいた。
「ご、ごめん……じゃあ、放課後に嬉々さんのところで!」
「……ん」
返事も聞けたので、私は足早に自分の席に戻る。
(私が話しかけるだけであんなふうに言われるなんて考えてなかった……。私ならわかってたはずなのに……どうにかしなくちゃ)
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次回へ続く
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