「まずいね、これは。リミッターを外して無理矢理変身させてるからより本心が出るようになってるよ……。
しかもよりにもよって機械!冷酷、残忍、復讐が特徴の人が変身するんだよなぁ。現に柚来ちゃんに対しても冷たいし……。
やっぱり清華ちゃんを変身させるべきではなかったのかな……。いや、過ぎたことは仕方ない。さっさと倒してもらって戻ってもらおう!」
「……嬉々、さっきから何言ってんの」
「お姉ちゃんは心配しなくて大丈夫だから!」
「……?」
彼女……真城さんは変身してから少し様子がおかしい。多分心の奥底を映し出すことにより変身してるから、本音の部分が強く出てるのかもしれないと、私は考える。
(にしても私、こんなに嫌われてたのかー……。いや、嫌われているというより真城さんは自分の大切なものを自分の力だけでなんとかしたいだけなんだよね。
それを邪魔した私に対して嫌悪感やジェラシーを感じてる……うん、国語なら100点満点貰えそうなぐらいには心情把握が上手だね)
真城さんが火鬼に向かって歩いているのをただ後ろから見ることしかできない私はそんなことを考えていた。
(でも、私だってこの鬼塚市をめちゃくちゃにされるのは嫌。お母さんもお父さんも良い人だし、友達だっている。こんなところで、真城さん……いや、真城なんかの為に戦うことをやめるなんてできない!)
「地獄の炎よ、今我らを癒やし給え」
『治癒《Heilung》』
青く光る炎が私を包み込み、徐々に傷口を塞いでいく。再生力は凄まじく、数秒で傷は全て治った。
「うわっ、ゲージめちゃくちゃ減ってんじゃん!まぁ強力だもんなぁ……。よし、取り敢えず戦うぞー!!」
「……あ?私一人で十分なんだけど」
歩いてると後ろから柚来が走ってきた。
「真城は自分一人で大事なものを守りたいんだろうけど、生憎私の大事なものと範囲が被ってるのよ!」
柚来より先にアイツらを倒すために私もペースを上げる。
「知るかッ!だいたい柚来みたいな陽キャは心配するやつが無駄に多いんだから戦うなっつーの!一緒にいた私が疑われるかもだしさ!」
口論と共にスピードも速くなる。
「はぁ!?この期に及んで自分のことしか考えてないの?意味わかんない!」
「もう私は柚来と考え方絶対合う自信ないね!」
「こっちだって真城のこと全然理解できない!ホントに正反対!」
このタイミングで火鬼の目の前に着く。
「「さっさと消えろぉぉぉ!!」」
私達は同時に叫びながら火鬼へと拳を振り下ろす。元々ダメージが入っていたので、その一撃で霧散した。
「ふぅ……」
私は変身を解除する。それと同時に身体中が痺れて動けなくなり、その場に倒れる。
「……あー、ホントに動けないや」
嬉々さんが言ってたけど、想像以上に動かない。まぁ、あんなふうに気持ちが高ぶって無茶な動きをしたのも原因だと思うけど。
「ねえ真城さん。私達、一回話し合うべきだと思うの」
柚希さんが私の目の前でしゃがんで、話しかけてきた。少し寂しがっているような、悲しそうな声だ。
「……確かに熱くなりすぎて沢山酷いこと言った。ごめん」
「私こそ、自分のことしか考えてないとか言ってごめん」
お互いに顔を見合わせて、微笑む。
このときはなんとか仲直りしたけど、この後また喧嘩するとは思ってもいなかった。
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次回へ続く
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