「とりあえず、昨日の俺の暴走した力について説明してくれないか?」
「そうだねそうだね! ……あ、」
何かを言いかけていきなり目を線にしてこちらを覗き込み、怪訝そうなララがテーブルに前のめりに寄りかかる。
「ルークスったら昨日女の子にあんなことするなんて、そんな悪い子に育てた覚えは無いんだよ! あたしはあたしはまだ怒ってるんだよ! シャルちゃんが帰ってきたら、ちゃんとごめんなさいしないといけないんだよ? 分かったー?」
普通の高い声よりも甲高い声で訴えてくる“自称お母さん”を見て少し笑いそうになる。
しかしお母さんこそ、昨日俺があの魔性のお姉さんに何されたか知ってくれたら、先にごめんなさいする順番が分かるはずです!
と言いかけたが、さらにトマト化するララのほっぺが爆発してしまわないか心配になり、心の底でグッと堪えた。
「分かった、帰ってきたら謝るよ」
素直に謝ると、「うんうん! やっぱりルークスはいい子だね!」
満面の笑みでこちらを見る太陽のように明るい女の子に、本題に早く入れと念を送ってみた。
それが効いたのか、ララはそそくさと話し始めた。
「えーー。うん! 昨日のルークスの力の暴走は、扉が完全に開いた状態での魔力と膂力を無制限に発生させたからなの!」
うん。うん。分からぬ!!
「魔力はなんとなく分かるけど、膂力って一体何?」
ふうと息を吐きララが説明を始める。
「まずはまずは、この世界の適性についておさらいをするよ?」
「この世界には六大適性があるのは知ってるよね? この中でも中でも、さらに分類分けがあるんだよ!」
「剣術士、格闘士、騎士は膂力系と言って、物理的な攻撃や防御を得意とする適性なんだよ。だからだから、適性のランクで身体能力とか反射神経に大きな違いが出るの!」
なるほど、だから今日の格闘士も解放した瞬間あんなに速く動けたのか。
「つぎの魔力系は残りの使役士、回復魔導士、暗黒魔導士の三つだよ! さっきとさっきと同じでランクによって出せる魔道攻撃の威力とか使役できる動物さんのレベルが変わるの!」
動物って……。あのおじいちゃんドラゴンを動物とか呼んだらとんでもなく怒るんだろうな、と思いつつララの話に耳を傾ける。
「そしてそして、わたしたちにある扉っていうのは、その開ける大きさで、力を大きくしたり小さくしたりできるの!」
「でも……」
「でもデメリットも当然あると?」
当たり前だ。簡単に世界を支配できるであろう力になんのデメリットも無いなんて、虫のいい話を信じるほどお人好しじゃない。
小さな桃色先生の授業は続く。
「それでねそれでね、扉はいずれ壊れるだよ。そしてルークスのは私の扉より強度が無いの」
俺は強度という概念があまり理解出来なかったが、それを察したララは例え話で説明してくれた。
「普通のドアもさ! 丁寧に静かに閉めたら壊れにくいよね? それと同じで、私たちの扉も開放が小さいとそれだけ扉に対する負担も少ないの!」
なんとなくピンと来るような来ないような例えだったが話の続きの方が重要だったので、茶々を入れるのはやめておいた。
「逆に逆に!昨日のルークスみたいに扉全開でドラゴンを召喚して神聖魔導を放つなんて、自殺行為もいいところなんだよ!」
「普通のドアでも思いっきり、バーーーン!! って閉めたら衝撃で凹んだり、大きな音が出るでしょ? その凹みや音がこの場合の副作用で、私たちの扉を痛める原因になるの!」
なんでこの子は扉の説明をドアでしてしまったのであろうか。
そんなララの天然さを感じながら、俺も自分の立場を死守するため必死に弁明を試みる。
「でも昨日は自分では制御できなくて……」
目線をララから外し、天井右端を眺めながらでしか弁明できないヘタレな男が、そこには存在していた。
半分無意識でやったから仕方ないだろ! と強く反論できないのは、この子の愛くるしさから来るものなのだろうか。
「うんうん! 確かにまだルークスは慣れてないから仕方ないね。扉には二つの開き方があるって聞いたの!」
え? 聞いた? ララよりこの力に詳しい人が居るはずがない。
……いや違うな。あの性悪な方が居たか。
「一つ目は、昨日の昨日のルークスみたいに、憎しみとか悲しいみたいな負の感情が溢れて自分を支配したとき! この時は副作用も大きいけど、その分大きな力が得られるの!」
「二つ目は、明確な目標、目的に向かって出したい適性をイメージした時! これはこれは冷静な判断をしている分、威力は弱くなるけど、負担は少ないかな。ルークスにはこっちがオススメだよ!」
なるほど。
一つ目のパターンはシャルルさんとの戦闘が当てはまるかもな。
殺したいという感情を抑えること出来なくて暴走した分、計り知れない力を得ることが出来た。
二つ目は、今日のキアを助けた場面に似ている。
力の調整はまだできなかったけど暴走するような力じゃなかった。
ヴァイスさんも適性B以上って言ってたし。
「でもなんでララより俺の方が強度が低いんだ?」
もっともな質問である、同じ工場で作られた製品でそれぞれで品質が違いますなんて、洒落にならないし、その場合欠陥品の俺は製造元である女神様に返品の手紙を出さなければならない。
さっきまでの元気なララの様子が一変したのが表情だけでなく、声色、座っている姿からも分かった。
「――それは……あたしのあたしの口からは言えない誓約になっているの」
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