ララが口を目一杯風船のように赤く膨らませて訴えている。
「はいはい。それじゃ話をクエストに戻すけど、あなた達にはココモア大洞窟で魔導石を掘削している作業員の元に行ってきて欲しいの」
そう言い、ヴァイスさんがクエストの依頼書を差し出す。
ココモア大洞窟? 聞いたこともないが、洞窟というとこないだのようなモンスターに襲われたりしそうなものだ。
「これって初級クエストなんですか?」
「いいえ、中級ってとこかしらね」
話が違う。なんでオールFの逆優等生でクエスト初心者の俺が、ウォーミングアップも無しにいきなり走り出さないといけないんだ。足とか攣っちゃったりしたらどうしてくれるんだ。
俺は側から見ても明らかに不満そうな目で自分の前に立っている筋肉ゴリラを見つめる。
「だってオールAのララちんがいるのに初級クエストなんて行かせたら絶対またあの香水女に嫌味を言われるもの〜」
「――上級適性者もどんどん減ってるし……」
あまり聞き取れなかった
「ん? ヴァイスさん何か言いました?」
「あ、いえ! なんでも無いわ」
何故か慌てて反応する。
確かにオールAのララをこないだイフラルに渡されたような、おばあちゃんのお守りレベルの依頼をさせるのも気が引けるか。
「分かりました。俺たちはその作業員のところで何をすれば良いんですか?」
渋々受けてあげました感満載で質問した。
「たまーにモンスターが出てきて作業員を襲うことがあるのよ。だからその護衛と掘削のお手伝いをして欲しいの」
聞く限りそんなに危険そうでは無いし、何より適性者様がこちらには付いている。
報酬も見た感じ悪くない。
「ルークスルークス! これララ行きたい! もしモンスターが出てきてもあたしが居るし、ルークスの扉の調整にもなると思うんだよ!」
確かに扉が操れない俺は実質オールFの無適性者のままだ。
それは嫌だと、ヴァイスさんから依頼書を受け取った。
――「二人でお出かけ楽しみだね!」
そう言って綺麗に舗装された石畳の上でピンクのサラサラな髪を靡かせて走っているのは、俺の相棒となる最強の適性者ララ・ダスティフォリア。通称「華姫」
依頼のあった場所はシュメイラル王国が管轄する鉱山地帯の一角に存在しており、金、銀の金属鉱物はもちろん、さまざまな属性を持ち力を発生させることができる魔導石が採掘する事が出来る、王国の重要な収入源の一つであるらしい。
ララの言う通り少し楽しみな部分は否定できない。
初めて、シュメイラルを出て異世界の世界に飛び出すんだ。男の子なら冒険心をくすぐられて当然だろう。
すると、前方でララが何か叫んでいる。
「ルークス! あたしあたしお腹が空いたよ! 食べないと一緒に行ってあげないんだからね!」
「はいはい」
さっきまで二人で出かけられることに感謝してくれていたのに。
女性の切り替えは恐ろしい。
確かに腹が減っては戦は出来ぬ。
冒険の前に腹ごしらえだ。
ここら辺だと『ボークス』が近いし、キアにも顔を出しときたい。
あそこでご飯を食べてから出発するか。
――立て付けの悪いきの扉をキイッと音を立てて開ける。
相変わらず店はギルドメンバーや昼で仕事を終えたおじさんでごった返していた。
しかし、今日は休みなのかはたまた、まだ出勤途中なのかは分からないが、キアの姿が見当たらない。
とりあえず、ララと向かい合って四人掛けの木製テーブルに腰掛ける。
メニューを見せ合い待っていると、程なくして、ウエイトレスが注文を聞きにやって来た。
「御注文はお決まりですか?」
「俺は季節のサラダとマクタン牛のステーキとパン二個でお願いします」
クエスト前だ、しっかり食べておかねば力が出ない。
「あたしねあたしねー」
ここで何故かピンク髪の美少女は呼吸を整えた。
コンマ数秒後、回復魔導でも暗黒魔導ではない詠唱らしきものが聞こえてきた。
しかも目の前から。恐怖だ。
「ランゴージュース、シェフ特製ボロホゴ鶏卵のオムレツ、ナンクルサラダ、ジャジャン牛のステーキ、クリクリ鶏のグリルココモン芋を添えて、カーラシンスの海鮮サラダノコノコキノコを添えて、小麦と酵母の饗宴グリルドンナモバターを添えて。でお願いするの!」
どんだけ過酷なクエスト行く気なんですか!? こんなの力出る出ないの問題じゃなく食べ過ぎでやられるだろ!
あとラスト三つのやたら添えてくるの何。最後に至ってはただ難しく表記しただけのパンとバターですよね?
「……クエスト絶対成功させないと」
驚いた顔をして厨房にオーダーを通すウエイトレスを見て決意した。
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