「おいおい! ルークスお前、キアやシャルルだけじゃ飽き足らずまだこんな可愛いチャンネー引っ掛けてきたのか!」
誤解を招く言い方をするな、名も知らないハゲ。
「あら、あんたが今日からウチに入るっていう噂の『華姫様』ね」
ヴァイスさんの一言で馬鹿騒ぎしていた奴らが静まり返る。
「あのねあのね! あたしその呼ばれ方好きじゃないの! ララって名前だから皆よろしくねー!」
それでも静寂は続く、理由は多分、こんな小娘が八年前の戦争でシュメイラルの勝利に貢献したなんて誰も信じないからだろう。
しかし、このギルドにはトラブルを起こさないと気が済まない人種の奴がいるのは周知の事実だった。
「おいおい! おじょーちゃんがそーゆー笑えない嘘言っちゃったからおじさん達びっくりしちゃってるよー? ほら! 今謝ればアメちゃんあげるからねー」
コイツは本当にお約束を裏切らないなと感心した。
すると背後の回復魔導士が前に出る。
「イフラルくーん。ちょっとこっち来てくれないかしら?♡」
「シャ、シャルルさん! ダメですよ。気持ちは嬉しいですが、こんなところで大人のレクチャーしてくれるなんて。恥ずかしい!」
あ、もうコイツ誰か黙らせて。と思った時には、シャルルさんの暗黒魔導詠唱が始まっていた。
どうなったかはあえて言わないが、イフラルは泣きながらギルドを出て行った。
「――うるさい奴がごめんなさいね。ララちん」
「ううん! あの人別に別に嫌いじゃないよ! 面白かった!」
ま、ララが嫌な思いをしていないなら良しとするか。
「それじゃあララちんも加わった事だし、今日はルークスちんと初めてのクエストに行ってもらうわ。あなた達なら心配ないでしょう」
初クエストか。なんだか異世界って感じだな。
「私も行こうかしら? ねーー、ヴァイスさん」
わざと、ねちっこくシャルルさんが口を挟む。
「あらアンタまだ居たのね〜、ララちんの送迎があんたの仕事なんだから早く帰りな?」
また喧嘩している。止めるのも面倒だなと思っているとララが不思議そうに二人を眺めて質問する。
「なんでなんで二人はお互い好きなのに、喧嘩してるのー?」
すかさず否定する大人が二人。
「あんた、華姫だか知らないけど、テキトーなこと言ってるとお姉さんも怒るわよ?」
「ララ様、こんな不恰好の者と私はなんの関係もありませんわ。ではこれで失礼しますわね」
多分ララは空気を読む能力が皆無なんだと悟った。
はぁ、こんなんでギルドでやっていけるのか。
「じゃ、香水くさい邪魔者も消えたし、クエストの説明をするわね。今回は最初だから、初級クエストをしてもらうわ」
するとヴァイスさんがふと思い出したようにララに質問する。
「ララちんはもうスレッドは持ってるのかしら?」
そうだ。俺と同じ世界線からきたララのスレッドとはどのような適性なんだろうか。
もしかしたら俺と同じオールFの落ちこぼれか?それなら正直安心する。なんて性悪な道連れ根性で耳を傾ける。
「持ってるよ! これがあたしのあたしのスレッドだよ!」
ララがヴァイスさんに手渡した瞬間、目を見開き自分の性別を思い出したように低い声で尋ねる。
「こ、こ、これはあなたのスレッドよね?」
しかしこんなスレッドを作れる可能性があるのはこの子しかいないと言うのもわかっての質問だろう。
「――オール……“A“の”適性者”が存在するなんて……」
やはり噂は本当だったのだ。
一輪の花が風に靡くかの如き可憐な戦いと美貌でオスタリア軍を撃退した『華姫』は確かにここにいたのだ。
それでも疑問というか不満は当然残る。不満は俺だけだろうが。
なんで俺はオールFの不適性者で、同じ世界線からやって来たララがオールAの適性者なんだよ! 扉仕事しろよ!
「なんで、ララには扉の力が作用してないんだ?」
ララはまた昨日の悲しい顔をして同じセリフを繰り返した。
「――ごめんね。やっぱり魂については話せないの。」
また魂か。
まぁ考えても分からないし、ララに聞いても答えられないのだから仕方ない。この残酷で理不尽な結果は広い心で受け入れよう。
「こう立て続けに馬鹿げたスレッドばかり見せられたらこっちの身が持たないわね」
太い首を左右に振りながら、ヴァイスさんが呆れたように吐き捨てる。
「でもそれがあの『華姫』様ならまだ納得出来る話ね」
「だーかーらー! ヴァイちゃんはあたしのあたしの事そのあだ名で呼ぶの禁止なんだよ!」
ララは子供のように口を目一杯風船のように赤く膨らませて訴えている。
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