クエストの前払い金が見事に吹き飛び、『ボークス』売上に貢献した、ブルジョアな俺達のテーブルに次々と料理が運ばれてくる。
その料理達が運ばれては即消え、運ばれては消えを繰り返している。
こんな小さな女の子のどこに収納スペースがあるんだと思いながら俺は肉を適当なサイズにカットし、口に運ぶ。
ララは早々に食べ終わり、俺の最後の一切れステーキに、空腹の野良猫のような羨望を含んだ眼差しを向けている。
「そんな目してもあげないぞ」
「えええー。ルークス優しいのになー」
そう言いまた上眼使いで琥珀色の瞳を向けてくる。
俺はそんな眼差しには全く気づかないふりをして、わざとらしく大きな口を開けて頬張った。
会計をしようと席を立つと、奥の方でキアが何やら男性と揉めているのが見えた。
流石に見過ごすわけにはいかないので、そのカウンターに近づき事情を聞こうとした。
カウンターにはギルドメンバーだろうか? 腰に派手な装飾を施した剣を携えた男が何やら困った様子でキアから説教を受けている。
黄金に輝く肩まで伸びる癖がかった金髪、異常なまでに整頓された顔、子犬のような可愛さも持ち合わせる美青年。いわゆる童顔イケメンだ。羨ましい。
顔の印象とは裏腹に細身ながらその体は筋肉質なのが、高級そうな服越しに分かる。
「キア、どうした?」
キアは少し疲れた様子で俺の存在を視認する。
「あ、ルークス。いやーこのお客さんがお金が無いのに飲み食いしてて困ってたの」
そんな最悪な紹介をされた男はあたふたしながら事情を説明してきた。
「違うんです! 気づいたらお財布落としていたんです〜」
「だ! か! ら! そんな言い訳うちみたいな店で通じるわけ無いって言ってんでしょーが! そんなんが通じてたらうちの店はとっくに潰れてるわよ!」
ど正論で説教され、また青年は肩を丸くしている。
「ま、まあさ悪い人では無さそうだし、ここは俺が出すから許してやってくれないか?」
イケメンを颯爽と助ける俺ってもしかしてイケメン!?っと気分をよくしているとララが冷めた表情で呟く。
「でもさでもさ。ルークスお金あるの?」
「いや、さっきヴァイスさんからクエストの前き……」
そうだった!! この華姫様の胃袋に全額投資したばかりじゃ無いか!
てゆーかなぜ浪費の原因のコイツに言われないといけないんだ。
でも、あそこまでカッコつけた手前ここで払わないという選択は出来ない…!
かくなる上わ。
「そ、そうだキア! 今からクエストに行くからその報酬で手を打とうじゃないか」
報酬の半分は前金で貰ってるし、損はしないだろうと踏んでの発言だった。
「ルークスがそこまで言うならいいけど。じゃああんた名前と職業教えなさい!」
強い口調のキアにビビりながら子犬イケメンはボソボソ答える。
「ええーと、僕、リリンベルク・フレア・ラスタネーレです。職業は……あの、冒険者です」
通りで性格に似合わずこんな立派な剣を持ってるわけだ。
「フレアね、じゃああんたルークスのクエストについて行きなさい! この剣も担保として没収させてもらうわね」
「え?」「え?」「いいと思うよ!」
三分の二が困惑して声が出た。
「友達は多い方が楽しいもんね!」
友達って、無銭飲食して捕まりかけてるただのイケメンだぞ。
「わ、分かりました。この方々のクエストにお供してお代を支払わせてもらいます……」
勝手に話が進んでる。
でも人数が多い方が危険が減るのも確かだと思う。
「分かったよ。キアには悪いがそれで手を打とう」
「いえ、私も助かったわルークス」
するとキアの目線が下がり、なぜか少し不機嫌気味に質問してきた。
「それで、このピンク髪の可愛らしいお嬢ちゃんは誰かしら? ルークスに幼女趣味があったなんて知らなかったわー」
目線を左上にして、意地悪そうに聞いてきた。
「あー。この子はルシアさんの妹で、今俺が面倒見るように頼まれちゃってさ……」
変に華姫のことを説明するとややこしいのでテキトーに嘘をついてその場をやり過ごす作戦だ。
「違うよ違うよ! ララはルークスのパーティーメンバーでルークスと同い歳なんだよ!」
あー、やっぱりこの子は空気を読んでくれないか。
「じゃ! 俺たちもう行くから!」
「あっ待ちなさい!」
小柄なララを左片手に持ち、右手で冴えない無銭飲食冒険者の首根っこを掴んで、俺たちの食事代だけギリギリ支払い逃げるように店を出た。
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