「ローフィーさん! アンタが言ってた護衛の方達を連れてきたぜ!」
狭いトンネルを抜けるとそこには、数十メートルの高さのどデカい空洞があり真ん中に大きなエレベーターの様なものがある。
そして空洞の側面には俺たちが通ってきたような小さなトンネルが無数に掘られていた。
「すごいな。この規模で掘削作業をしているなんて」
「おお! 兄ちゃんたちワシの愛する職場によく来たな」
クッタクタの白いタンクトップに白いタオルを首にぶら下げた冴えないおじいちゃんが上から降りてきて出迎えてくれた。
「ローフィーさんこの方々めちゃくちゃ強いですぜ! カラバイスとスリッキーの大群も一撃で倒しちまうんだから!」
あのモンスターにはそんな名前が。
「そうじゃったか。さすがはわしが見込んだだけあるわい」
ま、全部ララが倒したから俺は何もしてないがな。
手柄の山分けのために言わないけど。
「それにしてもローフィーさんがこんなに立派な施設の責任者だったなんて驚きましたよ」
「フォッフォッフォ、責任者と言ってもただ長い事ここで働いとったら責任を押し付けられただけじゃわい」
「それにしても大きな大きな採掘場だね!」
目を輝かせてララが素直に褒め称える。
「それもそうじゃろうて、この国で採掘される鉱石と魔石は9割以上がここで採掘されたものじゃからな」
「そしてこの場所はココモア大洞窟の中でも、最も重要な鉱物が取れる唯一の場所“セントラル“と呼ばれる採掘場なんじゃ、だからあんた達の護衛があると安心じゃわい」
やはり職人のプライドがあるのか、背筋を伸ばして自慢げに語るローフィーさん。
よしでは、ここでモンスターの襲撃がないことを祈りつつ作業を手伝うとするか。
そう決意した瞬間、耳をつん刺す音量で警報が鳴り響く。
「モンスター警報! モンスター警報! カラバイスの大群が九十八坑道からセントラル中央部に向けて進行中です! 繰り返します! 九十八坑道からカラバイスの大群がセントラルに向けて進行中!」
「なんじゃと! あのカラバイスが群れをなすなんて信じられん……。モンスターが大量発生したり、カラバイスが群れたり。この洞窟はどうなってしまったんじゃ」
しのごの言っても何も始まらない。
「ララ、お前なら坑道から突っ込んでくる蜘蛛野郎の待ち伏せをして大部分を倒すことができるよな?」
これしか無い。正攻法での戦いで三人(一人は無適性者)ではこの広い採掘場と作業員を守りきれない。
「うん! 分かった!」
「作業員の皆は中央エレベーター付近に集まってくれ! 俺とフレアの周りから離れないでジッっとするんだ!」
「ル、ルークスさんここは一回逃げた方が……」
「馬鹿言うな、ここで逃げたら毎晩俺の枕元にあの爺さんが出てきちまうだろうが。しかもララも今頃必死に戦ってる」
「そうですよね、すみませんでした」
「一つお願いがあるのですが、ルークスさんが腰に付けてらっしゃる、その件をお借りしてもいいでしょうか?」
こんな安い剣で鋼の甲羅に覆われたカラバイスを仕留められるとは到底思えない。
フレアが剣を持った瞬間、空気がひりついて身体中が痺れる。
フレアの顔つきがこれまでのナヨナヨしたへなちょこもやしイケメンから一変し、数多の激闘を繰り返した剣鬼の様な雰囲気が溢れ出す。
――カサカサ……カサカサカサ
確実に近づいてる。あいつらの足跡がどこからかしている。
しかし周りをいくら見回しても、あの気色の悪い十本足の怪物の姿が見えない。
一人の作業員が大声で俺に伝達する。
「うう、上だ! あんちゃん! 奴ら上からも侵入してきやがった!」
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