霧生と尚一の戦いが行われている間、榎高校は騒がしかった。
「キミたち、わかってる?」
海百合の声は、冷たく響く。話し相手は仲間ではあるものの、だからといって優しくする理由はない。
「わかってますよ。霧生たちの勢いを止めればいいんでしょう? 簡単なモンです」
陣内良和は頷いた。海百合の性格はわかっているので、手伝ってくれと言っても無意味だろう。
「そうじゃない。失敗は許されないってこと。それに希美、キミも」
良和の隣には、安原希美。彼女も海百合の子分の召喚師だ。
「ちょっと心配性が過ぎるんじゃない? 少しは私たちのこと、信頼しなよ? そう簡単に負けるように見える?」
「見えるから言ってる」
内心では、海百合は焦っているのだ。姫百合の手下の巴と灸が勝手な行動をとったことを聞いた。この二人もいつ、暴走するのかわからない。
「いい? もう手加減はいらない。邪魔な奴は片付ける。それだけで十分。今日は尚一が霧生と芽衣を直接叩くことになってる。だからキミたちは他の雑魚を潰す。アタシの目的の邪魔をさせないためにも」
「了解」
良和はそう返事をした。だが心の中では、そんなに邪魔だの雑魚だの言うなら、自分が直に行けばいいのに、と思っていた。しかしそんなことは口が裂けても言えないので、黙って榎高校の校舎に向かう。
「海百合は海百合で、何かやることでもあるの?」
希美は聞いたが、
「関係ないでしょ、さっさと行って」
と、あしらわれてしまった。
「ねえ良和、何か作戦はあるの?」
「二人で力を合わせるのは、最後の手段に取っておきたい。万が一逃げる羽目になったら、海百合に半殺し…で済めばいいけど、それは避けたいからね」
「じゃあ分かれて奇襲?」
「そうだ。相手は興介、真菰、第助、熾嫩の四人。こちらは顔はわかってるが、彼らは俺たちのことを知らない。上手く行けばこちらの存在に気付かれずに倒せるかもだ」
良和はポケットに、札の他に釘を忍ばせている。希美は水鉄砲を入れている。それぞれが式神のチカラによって、強力な武器になるのだ。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!