真実と偽りの境界

杜都醍醐
杜都醍醐

その後

公開日時: 2020年9月14日(月) 19:00
文字数:997

「ふう」


 要が従えていた部下は、解散となった。突然の宣告に驚く召喚師が多かったが、要が潔く土下座をすると、誰も咎めなかった。さらに旅に出ると言って、長崎から出て本州に向かった。


「霧生が何かしたんだろうな。俺の親友の心境を変えた何か。見てみたかったぜ」


 堤は一人、長崎に残っていた。と言うよりも要に置いていかれたと言う方が正しい。何もやることがないので、自分の行いで気を病んでしまった召喚師がいないかどうか、家を訪問して回る日々だ。


「ん?」


 紙飛行機が堤の服に刺さった。近くの公園で遊んでいる子供達がいたので、はぐれてしまったのだろう。その方角に投げると堤は反転し、来た道を戻った。


「いて!」


 何かが首の後ろに刺さったのだ。それを取ってみると、紙飛行機だった。ただ、先端が血で少し汚れていた。


「おいお、おっおい。子供にそんな腕力あるか?」

「違うね」


 後ろで声がしたので振り返ると、頭に奇妙な蝶を乗せた少女がいた。


「み、実衣じゃないか! 久しぶりだな、元気なのか? 解散式に姿を見せないから、心配したぞ?」

「別に? 危篤患者にでも見える?」


 そんなくだらないことを言う元気はあるようだ。


「ところでさあ、今まで散々使って来てくれたよね? 今度は、私の番。協力してもらうから。言っておくけど、拒否権ないよ?」


 実衣の隣には、黄竜型の新たな式神がいた。


「そ、それは?」

「驚いた? 広島市内で入手した、伝説の式神。お前たちが霧生とどんぱちやってる間にね、私も伝説とやらをかじってみたの。チカラはすごい。人が捨てたものの怨みを発現させる。だから今、お前が投げた紙飛行機はお前に突き刺さった。捨てられた恨みを果たすために、戻ってくるのよどこまでも。名前は[リベンジ]。今の私にはピッタリな名前」

「ピッタリって、復讐でもするのか? 誰に?」

「決まってるだろ! 霧生にだよ。私のこと、コケにしやがって! 許さない!」


 堤は、協力する気が湧いてこなかった。


「勝手にやってろ! 俺は………」


 顔を前に戻すと、いつの間にか藤四人衆に取り囲まれている。


「お、お前たち、どうしたんだ一体?」

「藤四人衆も、まだ決着はついてないって思ってんの。わかる?」


 そして実衣は言う。


「復讐は、始まったばかり。あの霧生に、一泡吹かせるわよ?」


 堤は、頷くしかなかった。それを確認すると実衣は宣言する。


「勝ったと思ったら、それは偽り。まだ何も終わっていない真実を突きつけてやる!」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート