「ふう」
要が従えていた部下は、解散となった。突然の宣告に驚く召喚師が多かったが、要が潔く土下座をすると、誰も咎めなかった。さらに旅に出ると言って、長崎から出て本州に向かった。
「霧生が何かしたんだろうな。俺の親友の心境を変えた何か。見てみたかったぜ」
堤は一人、長崎に残っていた。と言うよりも要に置いていかれたと言う方が正しい。何もやることがないので、自分の行いで気を病んでしまった召喚師がいないかどうか、家を訪問して回る日々だ。
「ん?」
紙飛行機が堤の服に刺さった。近くの公園で遊んでいる子供達がいたので、はぐれてしまったのだろう。その方角に投げると堤は反転し、来た道を戻った。
「いて!」
何かが首の後ろに刺さったのだ。それを取ってみると、紙飛行機だった。ただ、先端が血で少し汚れていた。
「おいお、おっおい。子供にそんな腕力あるか?」
「違うね」
後ろで声がしたので振り返ると、頭に奇妙な蝶を乗せた少女がいた。
「み、実衣じゃないか! 久しぶりだな、元気なのか? 解散式に姿を見せないから、心配したぞ?」
「別に? 危篤患者にでも見える?」
そんなくだらないことを言う元気はあるようだ。
「ところでさあ、今まで散々使って来てくれたよね? 今度は、私の番。協力してもらうから。言っておくけど、拒否権ないよ?」
実衣の隣には、黄竜型の新たな式神がいた。
「そ、それは?」
「驚いた? 広島市内で入手した、伝説の式神。お前たちが霧生とどんぱちやってる間にね、私も伝説とやらをかじってみたの。チカラはすごい。人が捨てたものの怨みを発現させる。だから今、お前が投げた紙飛行機はお前に突き刺さった。捨てられた恨みを果たすために、戻ってくるのよどこまでも。名前は[リベンジ]。今の私にはピッタリな名前」
「ピッタリって、復讐でもするのか? 誰に?」
「決まってるだろ! 霧生にだよ。私のこと、コケにしやがって! 許さない!」
堤は、協力する気が湧いてこなかった。
「勝手にやってろ! 俺は………」
顔を前に戻すと、いつの間にか藤四人衆に取り囲まれている。
「お、お前たち、どうしたんだ一体?」
「藤四人衆も、まだ決着はついてないって思ってんの。わかる?」
そして実衣は言う。
「復讐は、始まったばかり。あの霧生に、一泡吹かせるわよ?」
堤は、頷くしかなかった。それを確認すると実衣は宣言する。
「勝ったと思ったら、それは偽り。まだ何も終わっていない真実を突きつけてやる!」
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