最強マザコンヤンキーと娘溺愛ニートオヤジの異世界7日間戦争!~愛する人を救う為なら他はどうなっても構わねぇので天変地異起こします~

キョロ
キョロ

09 スキルの真価

公開日時: 2022年2月21日(月) 16:17
文字数:3,233

「……雑魚どもが…。卑怯な手でちょこまか攻撃してきやがって…!」


レッカの飛び蹴りとエルフ達の結界により二度の不意打ちを食らった獣人族の男。ダメージはないのか、直ぐに立て直してくる。

言わずと知れた獣人族のその身体の屈強さを目の当たりにしたレッカは流石に少し驚いていた。


「お前すげぇ頑丈だな…。何であの子狙ってる?」


「貴様に関係ないだろう。邪魔するなら嚙み殺すぜ…例えガキでもなぁッ!!」


まさに一瞬。

獣人族の男が消えたと思った次の瞬間、男はレッカの目の前まで距離を詰め拳を振りかざした―。

反射的にレッカは両腕を前に出しガードを作ったが、男はその人間離れしたパワーでガードの上から思いっ切り攻撃した。


「――ッ⁉⁉⁉」


速く重いパンチを食らったレッカは吹っ飛ぶ―。

ガードしたのと、パンチが当たる瞬間に自ら後ろに飛だ事で威力を和らげた。

まぐれにせよ人間のガキが攻撃を防いだことに感心した獣人族の男は、自分が負けるとはこれっぽっちも思っていないのかかなり余裕の表情をしていた。攻撃に驚いているレッカを見て、男はとどめを刺しに更に追撃した―。


「こんな遊びに付き合ってる暇はないんだよ。用があるのは女のスキルだ…甚振るいたぶる気はねぇ!一瞬でケリつけてやる!死ねえぇッ!!」


先程のパンチとは違い、今度は拳を握らず鋭い爪で抉ろうと男の手がレッカに襲い掛かる―。

しかしレッカはその攻撃を交わす。攻撃が空を切った男は立て続けにレッカを切り裂こうと攻撃を繰り返すが、レッカは全ての攻撃を交わしていた―。


「――遊びに付き合ってる暇はねぇって?……こっちのセリフだコラッッ!!」


―――ズドンッ!!!!!


攻撃を交わし続けたレッカは獣人族の男の懐に入り込むと、持ち前の喧嘩スキルにバフ効果で強化した渾身のパンチを男の腹に放つ―。

鈍い衝撃音が男の全身に響いた。レッカは初めてまともにダメージを与えた様だ。男は腹部を押さえ悶絶している。獣人族の武器である大きな体が膝から崩れた。かろうじて片膝をついてこらえているが、完全に見くびって気を抜いていた分ダメージが重くなってしまった。


(…バカなッ…⁉…何だこのガキ…ただ“オペラ”で身体強化しているだけでこの威力だとッ…⁉)


予想外の攻撃力に驚きを隠せない。

腹にパンチを入れたレッカも予想以上に獣人族の体が丈夫で硬かった為、「痛ってぇ~なぁ。」と手をヒラヒラさせていたが、立場は逆転。獣人族の男よりもレッカの方が余裕を見せた。

しかし、獣人族の男も黙っていない。今までは男も魔法やスキルを使っていない、言わば“普通の身体能力”。これが一番の武器である獣人族だが、ここから更に魔法や種族特性のスキルを使える者も多い。


少し息遣いが荒くなった獣人族の男は、腹部を押さえながら立ち上がり魔力を練り上げた。

この男の得意魔法は身体強化。奇しくも、レッカと同じ部類の魔法を使うが“質”が違った―。

完璧にコントロールされた魔力から生まれた身体強化魔法は、レッカのそれとは比べ物にならない。獣人族の男が身体に掛けたバフで全身が強化される。魔力に包まれた体はみるみるうちに肌の色が変わっていき、雰囲気が一変した。

その刹那―。男がレッカに飛び掛る。

瞬きした僅か一瞬で自分の真横まで来ている事に気付いたレッカは死ぬッ――。


――っと思いきや、男はその超スピードでレッカを攻撃するどころか素通りしていく。


(……しまったッ――!)


感づいたレッカだが時すでに遅し―。獣人族の男は狙いをレッカから“マリア”に変えていた。


「ガハハハッー!言ったろ?遊びに付き合ってる暇はねぇと!貴様とはさっきのでお相子だ!俺が用あるのはあの女だけだ!」


男が向かう先には離れた所で見ていたマリアとエルフ達が―。

マリアが狙われたと勘づいたエルフ達は再び魔法で結界を発動させた。二体のエルフはマリアを覆うように、もう一体のエルフは向かってくる獣人族の男を止めようと壁のように結界を出した。

だが、バフで強化された獣人族の攻撃はとてもエルフ一体で防ぎきれるものではなかった。


「さっきも結界を出したのはお前だな…。邪魔するなッ!」


男は張られた結界を拳で破壊する。衝撃で粉々にされた結界の破片と共に、結界を出したエルフも吹っ飛ぶ。

目の前で友達を傷つけられたレッカはブチ切れた―。

一体のエルフを攻撃した獣人族の男はマリア達を見た。怯えて動けないマリアとエルフ達。結界を張っているがさっきの攻撃を見た後ではそれも無意味であると誰しもが理解出来た。


レッカも動き出しているが間に合わない―。

獣人族の男はマリア達の目の前で腕を振り上げた。


(―クソッ…!間に合わねぇッ……!!)


本当にヤバい時は時間が止まって見える…。今まさにレッカはその状態だった―。視界に映る腕を振り上げている男と、それを見上げる様に見ているマリアとエルフ達。

全ての動きがスローモーションに見え、絶対間に合わない距離でレッカは必死に手を伸ばしている。


「ダメだ。」

そう思った瞬間、どこからかレッカに語り掛ける声が聞こえた―。


『――スキルを使え――ッ!』




眩い光でレッカの視界が覆いつくされた直後…。何とレッカはマリアとエルフ達の前で獣人族の男が振り下ろした攻撃を防いでいた――。


「――なッ⁉貴様どうやって…!!」


「「レッカ!!」」


「…危っぶねぇ!何だか分からねぇけど間一髪!」


何が起こったのか誰も分からない。勿論レッカ本人も…。

ただ理解できたのは、理由は分からないが何とかマリアとエルフ達を守れた事…。突然の事に獣人族の男も戸惑っている事…。

そして……バフで強化されている筈の男の攻撃をレッカが腕で防ぎきれている事―。


防いだレッカの腕から…いや、体全てがさっきまでとは違う魔力みたいな何かで纏われている。

瞬時に切り替えたレッカは、動揺している男の隙を突きそのまま腕を振り払う。

腕が弾かれ無防備になった男の腹に、レッカは再度パンチを放り込んだ―。


比べ物にならない程威力が増していたパンチは、獣人族の男を数十メートル先まで殴り飛ばした。

さっきより頑丈であった男の体に攻撃しても全く手は痛くなかった。レッカもマリア達も色々驚いている様子だ。

未だレッカの周りからは不思議な魔力が溢れ出ていた。


「何が起きてんだコレ…。」


自分の体を見るレッカ。するとまた“声”が聞こえてきた―。

その声の正体が分からないレッカは「何だ何だ?」と辺りをキョロキョロし始める。


『――聞こえる―?僕達の声が?』

『全然気づいてないみたい!』

『どこ見てるんだ?こっちだよ……“レッカ”。』


どこからか呼びかけられる声…。状況が全然理解できないが、レッカは戸惑いつつも遂に“声の正体”に気付づいた。


「……え?…“イノシー”?…それに“コン”?…嘘だろ…。」


『やっと気付いたみたい!』

『遅いぞレッカ!』


――そう。

レッカに語り掛けていた声の正体は“動物達”であった。

猪のイノシーに狐のコン。その他にも猪や狐、狸にリスに猿に鳥達まで。

辺りはいつの間にか野生の動物達が沢山集まっていた。これがレッカの“スキル”―。


「すげー!!何でお前等の声聞こえるんだ⁉皆喋れるのかよ!」


スキル名:【動物愛】

スキル詳細:【動物からとても愛される】


発動していたのはレッカがハズレだと思って使っていなかったスキル“動物愛”。

スキルは所持者の魔力レベルによりその効果も強くなっていく。スキル動物愛は、初期段階では人より少し動物に好かれやすい程度で終わるが、一定以上の魔力レベルで効果が強くなりより多くの動物達に好かれる。

そして魔導士レベルになると動物達の声が聞こえるという…。レッカはこれより更に上の段階にいた―。


動物達の声が聞こえ、会話が出来る程の高い魔力値と魔力コントロール。

それに相まって生まれつき動物達から愛されるという天賦の才―。

掛け合わさったこれらにより、スキル動物愛の効果が更に上がりレッカは何と……“動物達から魔力を貰える”様になっていた―。

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