第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-3:TAMAO-1

公開日時: 2021年9月27日(月) 17:00
文字数:990

会長の決意……あたいにはしっかり伝わった。そうだ。いけるとこまでいってみましょう。

「はぁ~」

「はぁ……」


 なんとか荷物を片付けて、あたいと生徒会長はお茶を一口飲んだ。

 開け放った窓から、普段とは違う音が聞こえてくる。水の流れる音。聞いたことのない鳥の声。浮わついたおじさんおばさん達のおしゃべり。日常とはかけ離れた時間を思い知る。


「それにしても、たまおちゃん」

「はい」

「あなたって……」

「は」

「あんまりしゃべんないね」

「はあ」


 よく言われるし、あたい自身はそれがいいとも悪いとも思ってないなら、コメントすることはとくにない。だから、考えはそこでおわり。でも大抵のひとには、それがよくない、ものたりないと言われる。


「ま、しゃべりすぎていいことはないから。あなたみたいなひと、あんまりいないタイプだから、ね」

「そうですか」

「うん」


 そう言ったときの笑顔は、それまでの生徒会長の印象とはずいぶん差がある、やわらかくてやさしい笑顔だった。そのギャップの向こうには何があるんだろう。あたいにしては珍しく、興味と疑問が浮かんできた。


「あの、会長」

「わっ!?」


 なぜだかわからないけど、会長が湯飲みを手から滑らせた。間一髪でキャッチしたけど、その慌てっぷりに、あたいの方がむしろ慌ててたかもしれない。


「すみません」

「いいのよいいのよ、あなたから声をかけられるとは思ってなかったんで」

「すみません」

「ううん、で、何かしら?」

「会長が……ミニ四駆部に入ったのは、どうしてですか」


 会長は目を見開いたかと思うと、静かに目を閉じた。眼鏡の向こうで何を考えてるのか、推し量ろうとするけども、難しい。


「ひとつじゃないんだけど」

「ひとつじゃなくていいで」

「でもひとつだと思うの」

「……ひとつですか」


 一口、お茶を口に運んでから、会長はゆっくりと目を開けた。


「あゆみに、押しきられた感じかな」

「押しきられた」

「諦めるどころか、放っておいた思いに、あゆみが火をつけちゃったから」

「それって、マラネロ女学院の」

「うん、それもある。それよりも、ミニ四駆っていうものに対して、レースに対して、何かと戦うっていうことに対して」


 確かに、「押しきられる」っていうことばは合ってる気がする。


「それでどこまで行けるのか、見たくなった、試してみたくなった、からかな。ごめんね、よくわからなくて」

「いえ、大丈夫です」


 キーになるのは、やっぱりあゆみ。

 と、フスマが勢いよく開け放たれて、そのキーが飛び込んできた。


「ゴハンだってさ!」


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