ふふーん、わたしがお母様にお願いしてつくってもらったユニフォーム。
きっとみんな喜んでくれるよねー? ……よねー??
「こ、この水着みたいなのを着ろと……!?」
「センパイ、いやボク、ムリですよムリムリ」
「……私は別に」
「ルナちゃん、いいよ、かっこいいよ!」
ロッカールームで、特別に、しかも内緒で準備した大会用のユニフォームを披露したら、みんな思ったとおりの反応だったのでわたしはニヤニヤとわらってしまいました。
デザインのテーマは、少し前のグランプリレースのスタッフのユニフォーム。動きやすいブラックのTシャツとスパッツに、テニスプレーヤーのようなスコートと少しセクシーなジャケットを合わせました。シューズはハイカットにしてスポーティに。あとミニ四駆を扱うときにケガをしないよう、オープンフィンガーのグローブを用意させました。
カラーはそれぞれのマシンから。あゆみちゃんは、ピンクの大径バレルタイヤ。会長はバイオレットのタイヤとAパーツ。たまおとたくみは、コペンのボディのブルー・グリーン。そして私はフェスタジョーヌのゴールド。うん、カンペキ。
「会長、あなたが率先してやらないとトゥインクル学園のみんなに示しがつきませんよ」
「うぅ……。」
「ミニ四駆部部長としては、これを着るのは部員の義務だとおもうけど」
「ですが……。」
「さぁ!」
目を潤ませる会長に、わたしはユニフォームを押し付けた。そんな時。
「ちょっとおたくら、そんなとこでごちゃごちゃしてるの、はっきし言ってジャマなんすけど」
振り返ると、金髪、日焼けした肌、乱れた制服、ひとことでいうなら……《ギャル》というのでしょうか。そういった風の娘が立っていました。
「あ、ああ、ごめんなさい」
会長が、ユニフォームを受け取って道をあけました。なんとか作戦成功です。
「わるいね」
ちいさく手を挙げて、長身のギャルさんはロッカールームの奥へ進んでいきました。なんでしょう、その背中は言葉とはちがった感じを受けます。
「たま姉、見た?」
「……《選手権》出場者の、パス」
「えっ!?」
そう、わたしたちやマラネロ女学院だけじゃない。カナガワのいろんなところから、ミニ四チューナーが集まってきているのです。その取り組み方はいろいろあって当然でしょう。
「それより急ごう! 早く会場入りしてコースを見ておくんじゃなかったの!?」
あゆみの声で、乱れた気持ちがピシッとする。そういう説得力が、部長にはあるのです。
「さっさと着替えて、いくわよ!」
みんながうなずいて、着替えを始める。いよいよ本番が近づいてきました……!
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