“I have to win.”
それとも ”We never lose.” 果たして。
予選上位3チームのキャプテンが集まって記念撮影をするというので、気はすすまないが表彰台の下、インタビューボードが立つスペースに向かった。スクーデリア・ミッレ・ミリアのスタッフが持つマシンは、私のマシンを忠実に再現している。私以外の残り4台は全て1分35秒台後半のタイムでまとめた。0.5秒の差は、私自身にも説明ができないけど、オリジナルとコピーの差、だろうか。
「赤井さん……」
アタックを終えたばかりらしく、涼川さんの肩はまだ上下に動いている。
「お疲れ様」
涼川さんに声をかけたとき、不意に背後から腕が伸びて私の肩をつかんだ。
「お二人さん! 3位のチームのことも忘れちゃ困るね」
「あなた……藤沢さん」
「秀美が気にするだけのことはあるね。すーぱーあゆみん、130R、大径バレルの全開片輪走行、気に入ったよ」
「はぁ……」
他愛もないやり取りをさえぎって、カメラマンからポーズの指示が飛ぶ。私を中心にして、3人で肩を組む。
「負けませんよ」
フラッシュの光のなかで、涼川さんが言った。興奮がまだ冷めない様子で、ユニフォームの肩からのぞく素肌は、まだピンク色に染まっている。
「そう?」
「ええ」
「どうして、そんなに自信が?」
「あたしに自信なんてないですよ。でも、あのチームなら、何があっても絶対に負けないって思えるんです」
「そう……」
撮影が終わって、涼川さんは迎えに来たチームのもとへ走っていく。そこにはパープルのコスチュームをまとった、奏の姿があった。
「スクーデリア・ミッレ・ミリアは勝つわ! それが、この紅(ロッソ)のスーツの宿命だから」
言って、私は背を向けた。
二時間のインターバルのあと、決勝。八時間耐久レースが待っている。勝つ宿命と、負けないキモチ。どちらが正しいか、わかるのはこの後だ。
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