残り3周、
とんでもないバトルが目の前で始まった!
さあ、エアロアバンテがフェスタジョーヌのリヤに入った。
ストレート、ホームストレートを駆け抜けていく。ここはルナがおさえこむ。
フェスタジョーヌはエアロアバンテの行く先をふさぎ、狭いコースを巧みに利用している。『バーサス』上でバトル状態になるということは、両者のラップタイムが接近している証拠……。
トンネルの中の高速コーナーからシケイン、ここが問題だ。ここも抜きどころ。しかし順位は変わらない。
もうルナも、さっき教えた「オーバーテイク」の手順を使っているのだろう。
しかしエアロアバンテが後ろに来ている!これは外からいく!もう会長はどっからでも行ける!
「会長! どうしました!? 大丈夫ですか?」
「あーっ! やってるわよ!」
「ルナちゃん?」
「……」
ルナから返事はない。完全に「スイッチが入った」感じなんだろうか。
あと2周。コース脇では「後ろからペースの速いマシンが来ている」ことを示すブルーフラッグが掲示された。しかしあと2周、ルナは譲らないつもりだろうか?
さあ、もう一度トンネル。これが勝負。
シケインが待っているが、ルナが押さえた。フェスタジョーヌがスライドしながら押さえていく。すごいレース、すごいバトルだ。
エアロアバンテが右に左に懸命にプレッシャーをかけるけど、抜けない!
これからファイナルラップ。
ルナにとって初めてのミニ四駆、そして『バーサス』体験が信じられないような、すごいレースになった。
本当に最後のトンネル内の高速コーナー、そしてシケイン。抜かせないルナ。恩田会長、先輩の威厳の灯火が、向こうでかすかに揺れて今にも消えそう……。
このレース、ルナの入部記念というよりも、トゥインクル学園ミニ四駆部にとっては大きな、大きな意味がある。これから最終セクション。
どんなにしても抜けない。ここはセルジナ公国・ストリートコース。絶対に抜けない!
最後の直線、後ろから会長が仕掛けるがどうか!
届かない!
ルナ逃げ切った! 猪俣ルナ、押さえきった!最後の最後、ギリギリいっぱいのところまでフェスタジョーヌ、MAシャーシは我慢した!
と、大きな音が食堂に響く。
「ルナちゃん!」
「猪俣さん!」
フェスタジョーヌがコース脇に止まるのと同時に、きゃしゃなルナの身体が、フローリングの床の上に崩れ落ちた……。
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