第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-2:TAKUMI-1

公開日時: 2021年9月26日(日) 17:00
文字数:1,015

大浴場って聞いてたけど、なんだか違うよ。でもそんな時、ボクの前で猪俣センパイが……!

「大浴場」って書かれた看板の下、ボクと猪俣センパイは立ち止まっていた。


 温泉宿のお風呂っていうから、ドラマとかに出てくるような露天風呂を期待してたんだけど、普通に屋根があって、タイル張りの大浴場だったんで、正直、がっかり。


「むー、また後で、みんなで入りますか~?」

「そうね……でも、せっかくだから入ってからもどろうよ」


 猪俣センパイはそう言い終わる前にもう、着てるものをもう、脱ぎ始めてる!


「は、はい、そうですね!」


 ボクも慌ててあとに続いた。

 一年生の間でもずいぶんウワサになってる、猪俣センパイ、いや、プリンセス・ルナ。そのひとと二人っきりでお風呂にはいるってことに今更ながら気がついて、焦る。これは、ヤバそうだよ……。なんでたま姉やあゆみは来ないんだ?


「いきましょ、たくみさん」


 ボクを待たずに、センパイは引き戸を開けて洗い場へ進む。自然にロールした髪が、細い背中でしなやかに揺れてる。ボクは何でかわからないけど、ゴクリ、とつばのカタマリをのみこんだ。

 そそくさと髪を、顔を、からだを洗っていく。まだ夕飯前の時間だから、ボクたちの前に入っていたひともいないし、後に入ってくるひともいない。貸切り状態のまま、二人で湯船に入った。


「はーっ」


 リラックスしたため息が聞こえるけど、ボクにはそんな余裕がなかった。黙ったままでいると、


「たくみさん、ありがとうね」


 そんなことを言うもんだから、のぼせたみたいに顔が熱くなる。お風呂の中だから目立たなくてよかったけど……。


「ありがとう、って、そんな、ボクはなんにもしてないですよ?」

「ううん。あなたのような、プラモデルを、ミニ四駆がわかってるひとが増えるのは頼りになるから」

「はー……わかってるんですかね……ってことは、センパイはなんというか、初心者っていうか」

「うん。まだまだ勉強中よ」


 でもつい最近、寮の食堂で生徒会長と猪俣センパイが《バーサス》でバトルしてセンパイが勝ったらしいって聞いたけど……。


「じゃあ、どうしてミニ四駆を? ていうかミニ四駆部に?」

「うーん、そうね……」


 天井を見てから、ニコッと笑ってボクを見た。


「部長が……あゆみちゃんが、真剣だったからかな? 食堂でグランプリレースを見てたときも、ミニ四駆のことを語るときも、普段からいつも全力だよね。その目かな。あの娘と一緒にいると、真剣に遊べそう。真剣に戦えそう。そう思ったからね」


 話し終えた猪俣センパイの笑顔は、本当に、キレイな笑顔だった。

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