必死でつくったミニ四駆部の申請書が受け取り拒否?
あたしは生徒会長へ直談判しにいった!
「なんでミニ四駆部はダメなんですか!」
あたしは思わず、長机に向けて両手を突いた。放課後の生徒会室に乾いた音が響いた。
ずいっと顔を近づけても、生徒会長の表情は変わらない。
「私が認めない。それ以上の理由が必要かしら?」
チタンフレームの眼鏡の奥、鋭利な光にひるみそうになるが、あたしは負けるわけにはいかない。
「書類は全部揃えました。顧問のセンセも見つけてます。その上で受け付けないってのは、職権濫用ってやつじゃないですか?」
「生徒会長として、当然のつとめを果たしているまでよ」
「なら、トゥインクル学園校則にもあるでしょう! 《我が校は学生の自主自律を尊重する》って!」
「おなじ校則の、第十一章一六八条にはこうあるわ。《部活動は、生徒の心身を健全に育成するものについて、これを奨励する》と。ミニ四駆のレースで、何か成長するものがあるのかしら?」
「レースはあたしに大事なものを教えてくれるんだ!」
あたしはもう一度、両手を強く机に突いて、叫んだ。
みんな二言目にはそういう。でも、そうじゃないんだ。レースは、ミニ四駆のレースには大事なものがたくさん詰まってるんだ!
あたしの鼻息が、生徒会長のメガネを曇らせる。
「じゃあ、質問を変えるわ」
会長は席を立ち、あたしに背中を向けた。長い髪が、振り向き際にふわっと広がる。
「涼川さん、あなた勝てるの?」
「んっ……」
一瞬、ひるんだが、あたしは言った。
「当たり前だ!」
「証拠は?」
「そんなもんはないけど……でも、これまで何度もレースに勝ってきた! だから、部活になって、『財団』に登録して《バーサス》を入れてもらえれば!」
「そんな泣き言、『すーぱーあゆみん』のいうこと?」
地元のレースのエントリーに使ってるあたしのハンドルネーム。生徒会長が、それを知っている。そこまで調べたのなら、あたしの強さを知っているのなら、なぜあたしの言葉は届かない?
「証明しなさい! あなたがミニ四駆で勝てることを。それができないなら、トゥインクル学園中等部の部活としては認められない!」
「証明すりゃ、いいんです、ね……」
あたしは、ごくりと唾をのんだ。
「わかりました会長。じゃあ、エリア最強の女子中学生チューナーに、三日以内にレースを申し込んで……叩きのめす!」
胸の前で、拳をにぎる。
生徒会長はあたしには見向きもせず、手元のスマホに指を滑らせ、無言で突き出す。
表示されたのは電話帳。発信スタンバイされているのは……「赤井、秀美! エリア最強チューナー、人呼んで、女帝!」
「挑戦相手はこの人、でしょ?」
「く……」
「三日もかけるなんてもったいないわ。明日トゥイン中に来てもらえそうなら、来てもらう。それでいいわね?」
「ちょ……」
あたしが返事するのを待たずに、会長はスマホを耳に近づけた……。
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