第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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第1話 発進! ミニ四駆部!!

SECTOR-1: AYUMI-1

公開日時: 2021年6月6日(日) 16:31
更新日時: 2021年6月12日(土) 11:23
文字数:1,137

必死でつくったミニ四駆部の申請書が受け取り拒否?

あたしは生徒会長へ直談判しにいった!

「なんでミニ四駆部はダメなんですか!」

 あたしは思わず、長机に向けて両手を突いた。放課後の生徒会室に乾いた音が響いた。

 ずいっと顔を近づけても、生徒会長の表情は変わらない。

「私が認めない。それ以上の理由が必要かしら?」

 チタンフレームの眼鏡の奥、鋭利な光にひるみそうになるが、あたしは負けるわけにはいかない。

「書類は全部揃えました。顧問のセンセも見つけてます。その上で受け付けないってのは、職権濫用ってやつじゃないですか?」

「生徒会長として、当然のつとめを果たしているまでよ」

「なら、トゥインクル学園校則にもあるでしょう! 《我が校は学生の自主自律を尊重する》って!」

「おなじ校則の、第十一章一六八条にはこうあるわ。《部活動は、生徒の心身を健全に育成するものについて、これを奨励する》と。ミニ四駆のレースで、何か成長するものがあるのかしら?」

「レースはあたしに大事なものを教えてくれるんだ!」

 あたしはもう一度、両手を強く机に突いて、叫んだ。

 みんな二言目にはそういう。でも、そうじゃないんだ。レースは、ミニ四駆のレースには大事なものがたくさん詰まってるんだ!

 あたしの鼻息が、生徒会長のメガネを曇らせる。

「じゃあ、質問を変えるわ」

 会長は席を立ち、あたしに背中を向けた。長い髪が、振り向き際にふわっと広がる。

「涼川さん、あなた勝てるの?」

「んっ……」

 一瞬、ひるんだが、あたしは言った。

「当たり前だ!」

「証拠は?」

「そんなもんはないけど……でも、これまで何度もレースに勝ってきた! だから、部活になって、『財団』に登録して《バーサス》を入れてもらえれば!」

「そんな泣き言、『すーぱーあゆみん』のいうこと?」

 地元のレースのエントリーに使ってるあたしのハンドルネーム。生徒会長が、それを知っている。そこまで調べたのなら、あたしの強さを知っているのなら、なぜあたしの言葉は届かない?

「証明しなさい! あなたがミニ四駆で勝てることを。それができないなら、トゥインクル学園中等部の部活としては認められない!」

「証明すりゃ、いいんです、ね……」

 あたしは、ごくりと唾をのんだ。

「わかりました会長。じゃあ、エリア最強の女子中学生チューナーに、三日以内にレースを申し込んで……叩きのめす!」

 胸の前で、拳をにぎる。

 生徒会長はあたしには見向きもせず、手元のスマホに指を滑らせ、無言で突き出す。

 表示されたのは電話帳。発信スタンバイされているのは……「赤井、秀美! エリア最強チューナー、人呼んで、女帝エンプレス!」

「挑戦相手はこの人、でしょ?」

「く……」

「三日もかけるなんてもったいないわ。明日トゥイン中に来てもらえそうなら、来てもらう。それでいいわね?」

「ちょ……」

 あたしが返事するのを待たずに、会長はスマホを耳に近づけた……。

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