第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-2:KANADE-1

公開日時: 2021年10月24日(日) 17:00
文字数:1,028

ミニ四駆チューナーでも、生徒会長でもない、

一人の中学三年生になる瞬間……それは、「あれ」を口にする時……の、はず! なのに!

「はぁ……。」

食事のテーブルにたどり着いて、私は溜息をついてしまった。

あの、丸くてふんわりしてて、でも芯はしっかりしててスパイシーな、アレがない……。たぶん私たち女子中学生には似合わないと思われたんだろう。でも! それでも、私はアレがないと……。

「たこ焼き、ございませんね」

「はっ……ルナ、ちょ、何を言うの」

「だって、聞こえましたよ。『なぜだっ……たこ焼きがない……』って」

「はっ!」

私は反射的に右手で顔をおおった。

「まあ、たこ焼きがないならパスタを食べればいいじゃないですか」

「ぐぬぬ……。」

言葉の意味もわからないまま、不本意ながらナポリタンをよそって、お箸で食べる。つるるっ、と吸い込んだ途端に、ケチャップの甘酸っぱい香りが立ち上がる。……まあ、これはこれで許さないこともないけど。と、

「ルナ! あなたも意外ととしぶといわね!」

聞き覚えのある甲高い声。声の主は、ゴスロリ衣装にツインテール。

「あ、志乃ぶちゃん、あなたも予選とおったんだ」

「あったりまえでしょ! あなたたちみたいにまぐれで通ったんじゃなくて、わたくしを中心にした、強力なチーム力で決めたんだから!」

「そっか~、みんな頑張ったんだね!」

「むー!」

噛み合わない会話だけど、確かに川崎さんのチーム「レジーナ・レーシング」は選手ごとのタイムのバラツキが少なく、高いレベルで安定してる。もちろん、その究極は秀美たち「スクーデリア・ミッレ・ミリア」ではあるけど。

「せいぜい、わたくしのナイトレージを見たら道を譲ることね!」

「うん! あゆみちゃんに言っておく!」

「きー!」

そう言って川崎さんは人混みに消えていった。

「ルナ、平気?」

食ってかかるような川崎さんの言い方が、ルナの、いや、某国のプリンセスの気にさわったのではないかと、やや恐い。

「え、何がですか?」

「いや、さっきの川崎さん、あなたの動揺を誘おうとしてたんじゃないの?」

「え?」

ルナが、心底意外そうな顔をする。

「志乃ぶちゃん、私たちのことを喜んでくれてましたよ? 一緒に頑張ろうって。嬉しいです!」

あ、あー……。私にはそう聞こえなかったんだけどね……。。

「何にせよ、予選六番手だから私たちの近くでレースを進めることになるわね」

「そうですね~。志乃ぶちゃんのことだから、何か目立つようなことをしてくるような気がしますわ」

「確かに……」

ふとした拍子に、こうやって鋭いことを言うので、ルナからは目が離せない。それにしてもあゆみとたくみはどこにいったのやら……。

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