第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-6:KANADE-1

公開日時: 2021年9月30日(木) 17:00
文字数:1,187

昇る朝日に、私は決めた。あゆみと、このみんなとで頑張っていくんだって。

 夜明け前に目が覚めて、布団の中でモゾモゾしていたら、誰かが部屋を出ていく音が聞こえました。二人、それとも三人? 顔を合わせるのもバツが悪く、私は物音が止むのを待って目を開けました。

 障子の向こう、夜が終わって朝になり始めている。日の出が近い。私は布団を這い出ると、浴衣の上にジャケットを羽織って、静かに部屋を出ました。

 学校にかよい、勉強に生徒会に部活、そして帰って休んで、また次の日が始まる。そんな繰り返しから抜け出たときでないと、日の出なんてみる機会はないから。正面を出て駐車場へ行くと、箱根の山々の間から太陽が浮かび上がろうとしていた。


「きれいですね」


 背中からかけられた声に振り向くと、Tシャツ姿のたくみがいたのです。


「あれ? 何しにきたの?」

「会長こそ! ボクはただ、朝の内に少し走っとこうと思って」

「へえ……そんなことしてるんだ」


 ナイロンの短パンに、ランニング用のシューズ。いつものヘッドフォンは軽いイヤホンに交換してあるし、ソックスはくるぶしまでの短い形で、すねやふくらはぎがあらわになっている。そんな健康的な姿からは、「モケジョ」であることは想像できない。


「たくみは、どうしてプラモデルとか、ミニ四駆が好きなの?」

「どうして? いやあ、好きだから、としか答えようがないですけど……」

「それじゃあ、ミニ四駆部に来たのはどうして?」


 すっ、とたくみの顔に薄暗いものが走ったけど、ほんの少しのことでした。


「あゆみが……」


 一瞬いいよどんで、続ける。


「あゆみがうらやましかったから、ですかね?」

「うらやましい?」

「あー、うまく言えないんですけど、一歩、いや二歩くらい先を行ってるんですよ。ボクたちがキャラクターのプラモを作ったら、その時にはリアルなロボットを作ってるし、追い付いたとおもったら今度はミニ四駆」


 たくみは私の横まで歩いてきた。昇る朝日が、晴れやかなたくみの顔を照らす。


「わかるわ。あのコが《ミニ四駆部》を作るって言ってきたときもそうだった」

「ナイショにしててほしいんですけど」


 たくみが小声で言う。


「あゆみは……ボクのあこがれ、かも、です」

「ふーん」


 いいことを聞いた、とつい私はニヤけてしまう。


「会長!」

「うん、わかってるよ。ホント、あのコはファンが多いわよね……」


 ゆらゆらしていた太陽の輪郭がはっきりしてきて、強い光になっていく。そうするともう、直接は見ていられない。


「そういえば会長、チーム名なんですけど」

「ああ、なにか考えた?」

「はい、もう、いくつか思い付いたんですけど、これしかないなって」


 たくみの考えた名前は、もともとこうだった、って思えるくらいに自然で、逆らえない強さがあった。


「うん、私も、それがいいと思う」

「ありがとうございます! じゃあ、ボクはひとっ走りして戻りますんで」


 言い終わる前に、たくみは駆け出していた。照れ隠しなんだろうけど、ちょっと可愛かったよ。

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