第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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第7話 カナガワ地区大会、予選!(上)

SECTOR-1:AYUMI-1

公開日時: 2021年10月10日(日) 12:00
文字数:1,092

きっぱりと夜は明けた。

ヨコハマ港に昇る朝日が、街を、そしてあたしを照らす。ついにこの日がきた!

 みなとみらい。


 未来は、追いかけ続けても追い付くことのできない場所。だからこそ追いかけ続けなければならない、追いかけたいもの。そんな名前がつけられたヨコハマの観光地。その奥に建っているイベントスペース、パシフィコヨコハマ。4つあるホールのうち半分をつなげてつくられた場所で、「ミニ四駆選手権」カナガワ地区予選は開催される。


 昨日は早めに寝てしっかり休もうと思ったけど、その分結局早く起きちゃった。でもじっとなんかしてられないから、ほとんど始発の電車に乗って、ここまできてしまった。会場になる建物にはまだ入れないから、デッキの上からみなとみらいの景色、そして名前の由来にもなってるヨコハマ港を眺めてる。


 朝日が昇る。スイカを切って並べたようなホテル、天高くそびえるタワービル、かすかに揺れている海、そしてあたしの顔を、あたたかい光が照らしてゆく。


 この日をこうして迎えられたことが、本当に信じられない。たった2か月前までは、あたしの周りには誰もいなかった。でも勇気を出して、部活にしよう、選手権を目指そうと思った日から、全てが動いたんだ。ひとつひとつのできごとがつながっていて、どれかひとつが欠けてもここまではこれなかった。


「……ありがとう」


 口をついて出た言葉がすべてだ。


 あたしの、ただ単純に、好きなことでは負けたくない、ナンバーワンになりたいっていう思いが、会長、ルナ、早乙女ズ、そして女帝:赤井さんとのつながりを導いてくれた。


 一人だけではレースにならない。グランプリレースは、よくサーカスにたとえられる。世界中を、同じメンバーで旅していく。その選ばれたレーサーたちが、本当に命をかけたレースを見せて、次の国へ移動する。


 ミニ四駆も同じ。受け入れてくれる運営の人たちと、あたしたちチューナー、それだけじゃない、レースにかかわるたくさんのひとたちが、イベントを作り、成功させるために動いている。


 だからこそ、その輪の中で輝きたい。あたしの、あたしたちの速さを証明したい。


 胸の前で手を握る。


 勝とう。やってみるとか、全力を出すんだとか、楽しもうとかじゃない。今はもう、地区予選に勝つための、《女帝》に勝つためのことしか考えてない。そのための準備はしてきた。自信はある。


 でも、あたしだけでレースをするんじゃないってことも、十分にわかってる。


「あゆみちゃーん!」

「あゆみ、ちょっと早すぎじゃない?」


 遠くから声がする。顔をあげると、ルナと会長が走ってくるのが見えた。ポケットからスマホを取り出すと、数分前の不在着信がたまっていた。たまおからも着信が入ってる。


「うん! 行こう!」


 あたしは二人の方へかけていった。

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