第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-FINAL :RUNA-2

公開日時: 2021年7月11日(日) 20:29
更新日時: 2021年9月20日(月) 20:25
文字数:982

やわらかい光の中。

グランプリの記憶が、よみがえってきました。

まだ小学生にもならない頃でしょうか。いまに比べると低い視界。開け放たれた窓の向こうから、大勢の人々の話し声と、エンジンのアイドリング音が聞こえてきます。

見下ろすと、原色、金属色、蛍光色、目がくらむような色の大群。

人だかりがいくつもできている、その中心には、空気の流れをつかまえたかのようなフォルムのマシンたち。屋根のないコクピットには、すでにドライバーがおさまっています。


『母上』


記憶の中のわたしがいいました。


……なあに。

『母上、あのね、あちし、大きくなったら、あのクルマを運転するひとになりたい』

……そう、でも難しいわよ。

『どうして?』

……グランプリに出るためにはもっと下のクラスのレースに勝った、選ばれたひとしかなれないもの。それに力がつよくないと。

『ふーん、じゃあ、ああいうクルマを作る人ならどうかな?』

……あら、それならまだいいかもしれないわね。

『うん、あちし、レースに出られるようなクルマをつくる! つくってみせる!そして勝つよ!』

……そう、じゃあがんばりなさい。


見上げた母上は笑っていて……

「母上!」


気がつくと、わたしは寮のベッドの上にいました。


「ルナちゃん」

「大丈夫ですか? もう本当にびっくりして」


恩田会長と、涼川さんが身を乗り出して私を見ています。そうでした。『バーサス』でミニ四駆のレースをして、無我夢中で、コントロールラインが見えたところまでは覚えていますが。


「大丈夫ですよ」


わたしはベッドから降りました。


「それより、レースはどうでした?もう必死でしたので」


涼川さんを見ると、一瞬目を伏せてから、強い視線とともに言いました。


「ルナちゃんが勝ったよ! 0.125秒差!」

「そうですか。じゃあこれで部に入れてもらえますね」

「え?」


二人は、お互い見合わせてから、わたしを見ました。


「そんな、試験のつもりだったんですか……」

「ううん、いっしょに走らせてくれれば、それで十分」


涼川さんが跳び跳ねて、わたしと会長さんを両腕で抱き寄せました。


「よーし、これで部員3人だ! 明日もう、《ミニ四駆選手権》へのエントリーをしちゃおう!」

「涼川さん、まだ猪股さんが出てくれるとは聞いてないですよ」

「やります! わたしと、フェスタジョーヌで参加させてもらいます!」


あの日みた景色、それは『バーサス』でしっかりと再現されていました。


そして、あの日の夢は思わぬ形で実現しそうです。

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