みんなの思いをかたちに、あたしの願いをタイムに刻む。
空かける稲妻のように、ひらめけ!エアロサンダーショット!
「すごいじゃん!」
「うわわわ」
「会長やったね~」
「うわわわ」
「……脱帽」
「うわわわ」
《女帝》の存在が、会長の気持ちを大きく動かした。タイヤの温度とペースコントロール。それだけでなく、これまでテストを重ねてきたマシンの実力が出たってこと。
「あとは……」
あたしがやるっきゃない。会長が出したスーパーラップを活かすには、それを上回るタイムを出すしかない。何台ものマシンがコースインしたから、路面にはラバーグリップという強力にタイヤが吸い付くラインができている。でもそこを外すと、逆にタイヤの削れたカスが溜まっていてコースアウトの原因になる。
前半の連続するコーナーは、今それこそ一本橋をわたるような難しいセクションになっている。ただ、そのラインを外さなければ、コーナーよりもストレートに力を入れたセッティングにもできる。
ただ、調整するための時間は少ない。あたしはギヤボックスを開けて、ひとつ高いギヤに変えた。そしてバレルタイヤの表面をキレイにぬぐう。安定性におとる大径タイヤで、少しでもグリップ力をかせぐため。
『5番目にアタックするマシンをコースインさせてください』
エアロサンダーショットがピットレーンをかけていく。ここで終わるか、それとも決勝につなげられるか。
「サンダーショット、全開(フラットアウト)!」
《COPY. Mode 5 Running.》
第一コーナー、よりきつい第二コーナー、短い直線からS字コーナー。大径バレルタイヤが悲鳴をあげるけど、ペースは落とさない。モーターに負担がかかり、温度が急上昇する。最初の区間タイム、《女帝》からは0.3秒差。
乾いたくちびるを舐めながら、高速コーナー、そしてヘアピン。急減速に、4つのタイヤから大きな煙が上がるけど、コントロールは乱れない。立ち上がって、折り返しの大きなコーナー。ここからが勝負。
外側に膨らみながらも加速、加速、時速300キロを超えてさらに加速。バックストレートの計測ポイントで《女帝》のタイムに並んだ。みんなの、いや何よりもあたし自身のために、高速左コーナー、荷重の抜けたイン側のタイヤが空転する寸前のところで、縁石を飛び越えるように駆け抜ける。最後のセクション、シケイン。
「止まれっ!」
前傾姿勢になったエアロサンダーショットが、右、左と向きを変える。コースオフはない。再度、全力の加速!
「どうっ!?」
あたしはグランドスタンドに掲げられたモニターを見上げた……!
Qualifying session
Afterr final stint
P1 #1 Scuderia Mille Miglia 4.46.897 (1.35.742)
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P2 #30 Super Ayuming Mini4 Team 4.48.398 (1.34.700)
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