第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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第6話 結成! すーぱーあゆみんミニ四チーム!

SECTOR-1:AYUMI-1

公開日時: 2021年9月25日(土) 17:00
文字数:1,485

大会まで時間がない! こんなときはどうする? ……合宿だっ!

「やっと着いた……」


 あたしたちの前にあらわれたのは、古式ゆかしい旅館の門構え。作られてから時間を重ねてきたのだろう、くすんだ感じも頼もしく思える。

 バスから降りてきた会長、ルナ、そして早乙女ズ……たまおとたくみもあたしと同じようなリアクション。


「あなたのお母様もなかなか、詳しいのね」


会長が言うと、ルナは照れて笑った。


「ママはこの辺に何回か泊まったことがあるっていうから、探してもらったんだ」

「……納得」

「そんなことより早く入ろうよー、ボクもう疲れたよ」

「それもそうね、よっし、トゥインクル学園ミニ四駆部、移動!」


 ここは強羅。ロボットの秘密基地でもありそうな名前だけど、あたしたちミニ四駆部は揃ってやって来た。何で? と言えば、「ミニ四駆選手権」地区予選を戦う前に、いちどみんなで話し合いたかったから。つまりは……合宿だ。あたしの思い付きにルナがこたえて温泉つきの宿を探してくれた。会長は、こういうのが趣味なのか時刻表でルートを調べて、バスの遅れすら計算に入れた完璧なスケジュールを組んでくれた。たまおはルナと泊まりに必要なものを用意してくれたし、たくみは会長のプランにあーだこーだ注文をつけて、ゆとりのある計画にしてくれた。

 なんというか、準備をする段階で目的はほとんど達成されちゃったような気がするんだな、これが。


「ごめんくださーい」


 玄関を上がったところで声をあげるが、誰も出てこない。しばらくたって、遠くから小走りの足音が近づいてきた。


「んもーお母さんったら……どうもごめんなさい。ようこそいらっしゃいました」


ぺこり、とお辞儀をしたのはあたしたちと同じくらいの女の子。


「あー、どうも。お、お手伝い?」

「はい! お母さん、いや、おかみさんがちょうど団体さんのお見送りに行っちゃってて……そうそう、トゥインクル学園ミニ四駆部さん、でいいんですよね」

「はい」

「じゃあ、お部屋用意してますんで、お上がりになってください」

「おじゃましまーす」


 一泊だからそんなに荷物は多くない……と思ったら、ルナは外国にでも行くのかっていうようなキャリーバッグを転がしてるし、一方でたまおはデパートの紙袋ひとつだ。みんなバラバラ。


「あの、涼川あゆみ、さんですよね?」

「はい!?」


部屋まで案内してくれてる旅館の娘から声をかけられて、あたしはアタマから変な声を出しちゃった。


「わたしもミニ四駆やるんで、その、《すーぱーあゆみん》のウワサは聞いてます」

「あー……」

「よっ! 人気者!」

 たくみが茶化す。まあ、まんざらでもないけどさ。


「あなた、ミニ四駆やるっていうけど、ひょっとして『選手権』は」

「出ます! 強羅中学校プラモデル研究会、チーム《メリーゴーランド》です!」

「あ、そう……」


 思わぬところにライバル? あたしが言葉を探してる間に、部屋についてしまった。


「それでは、ごゆっくりお過ごし下さい」

「はーい」


畳敷の部屋がふたつ。五人じゃもて余しそうな、広い部屋だった。


「あー、ボクお風呂入ってくる」

「待って、わたしも~!」


 荷物を放り出したたくみを、ルナが小走りで追いかける。


「ズボラ」

「そうよね、全くもう……」


 たまおと会長は、奥さんよろしく荷物の片付けと、お茶をいれる準備を始めた。なんというか、うん、わかる。それよりもあたしの中で気になることが渦を巻いてとまらない。


「あたし、ちょっと、さっきの娘に聞いてくる。『選手権』のこと」

「ちょっと、涼川さんまで!」

「すぐ戻るから、ごめんなさい」


 そう、さっきの娘。ミニ四チューナーならわかる。言葉ではうまく説明できないけど、「デキる空気」を持ってた。そう、感じたんだ……。

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