第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-2: KANADE-1

公開日時: 2021年6月12日(土) 11:16
更新日時: 2021年6月12日(土) 11:24
文字数:993

生徒会長たるもの、学生から嫌われるのも仕方がない、とは思うけど……。

気がつけばあいつにリダイヤルしてた……。

「うん……うん、そういうことで。昼間も突然で悪かったわね」

『ま、こっちのプラス1ポイントってことにしとく』

「うん」

「じゃあ明日、ウチの学校の《バーサス》持って行かせてもらうわ」

「ありがとう」

『そんなに意地張んなくてもいいんじゃない? 楽しくやれればそれでいいじゃない? 楽しくやれれば、それでいいと思うけど』

「そういうわけにもいかないのよ……」

『ま、行かせてもらうわ。それと、あなたのことも待ってるから』

「うん……」

 私は通話を終わらせ、スマホをベッドの上に置いた。自分の部屋の空気は蒸し暑く、開け放した窓から入る空気も熱気を帯びている。全寮制で相部屋が基本だけど、生徒会長特権とやらで、私には一人部屋があてがわれている。枕元に置いた書類をつかむ。

『部活動新設届出書』

 よく言えば勢いのある、悪く言えば乱暴な字でかかれた1枚の紙。

○設立を希望する理由

 ミニ四駆は発売から三〇年を越える模型自動車のホビーです。最近では、クルマの性能を読み取り、バーチャル空間でのレースをシミュレーションする《バーサス》という機械が開発され、女子中学生が参加できる大会も開かれています。私は、トゥインクル学園にミニ四駆の速さをみがく部をつくり、選手権への出場資格をもらって大会に出場します。そして、勝ち、全国大会に出場し、トゥインクル学園を最強のミニ四駆中学にしたいと考えています。

○部長

 二年Z組 涼川あゆみ

○部員

(空欄)

○顧問名前、印鑑あり

 確かに、書類にはなんの不備もない。いや元々部の新設に関して明確なルールはなかった。それを、あの涼川あゆみという子は乗り越えて、校則を読み込み理解した上で動いている。

 この書類も、どうせ無理だと思って吹っかけたつもりが、きちんと作ってきてしまった。

 でも、許したくはない。

 ミニ四駆は、あくまで趣味の範囲でやるものではないのか?勝ち負けにこだわるからこそ、痛みや苦しみもまた生まれるのではないか?

 部屋に目を移すと、ポータブルピットに突っ込んで、クローゼットの奥に押し込んだ、《それ》の気配を感じる。ただのプラスチックのカタマリのはずなのに、《それ》はみずから熱を持っている。そう、感じる。

「やっぱり、逃げられないのかな」

 私は、ベッドにからだをあずけた。柔らかなスプリングがぐっと縮んで受け止めてくれる。

「この、熱気から」

 独りごちたとき、吹き込んできた風に、カーテンが揺れて広がった……

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