第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
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SECTOR-2:KANADE-1

公開日時: 2021年11月24日(水) 16:55
文字数:1,079

秀美のことももちろん気になりますけど、

今はキャプテンで後輩の面倒を見ないとね。私たちはチームだから。

《スタート5分前です》


ピットウォールの席に座り、《バーサス》のバイザーをつける。がらんとした展示場は一転して、サーキットの風景へと変わる。


「気温25度、路面温度は40度。風はホームストレートで向かい風2メートル」

「会長、ありがと」


私の役割は、チームの司令塔であるあゆみのサポート。そしてルナ、たまお、たくみのフォローも当然ある。生徒会長とかいう肩書きはこの際しまっておこう。今は《すーぱーあゆみんミニ四チーム》のひとりなのだから。


「あゆみ、ほとんどのマシンがコースインしてきてる。タイヤの選択はけっこう別れてるわね」


ホームストレートを各チームのマシンが通りすぎてゆく。スタートはペースカー先導でのローリングスタートと聞かされた。隊列ができるまで、各マシンはウォームアップとしてコースを走っている。


「《ショウナンナンバーズ》のトップフォースは……大径バレル。《レジーナレーシング》のナイトレージも……大径。こっちはアバンテJr.のタイプ」

「うーん……。」

「あゆみ、迷ってる?」

「え、いやもう決めたことです」

「そうね。」


あゆみは明らかに緊張している。ここは先輩としての姿を見せなくちゃ。


「……あゆみ、これから先は回りを見てから自分たちを見るんじゃなくて、自分たちのことを決めてから、回りを見るようにしよう」

「そうですね」


といいつつも、私もあいつを、秀美を意識してるのはわかってる。もし秀美は、自分が負けたときに、ミニ四チューナーとしての自分をどうするつもりなの……。


「アスチュート!」


弱気な思いはあゆみの叫びと、フレイムアスチュートの排気音にかき消された。

深紅のマシンが私達の背後、ピットロードを進んでゆく。タイヤは予選と変わらず、赤いローハイトタイヤだ。


「秀美、ウォームアップもほとんどしないなんて相変わらず余裕ぶってるわね」

「マシンの状態は完全にわかってるってことですかね……」

「ほら、回りから見てる」

「あ」

「気を付けて」


《スクーデリア・ミッレ・ミリア》のフレイムアスチュートがコースインして、すべてのマシンがピットから出たことになる。

隊列を整えるために、パトライトをルーフにのせたマシンがあらわれ、赤いマシンの前についた。


「ペースコントロール、隊列に入って」

《Copy.》


あゆみが指示を飛ばした。エアロサンダーショットはマシンをかき分け、アスチュートに並ぶ。


「ルナ、たまお、たくみ、そっちは大丈夫?」

「問題ないです」

「……オッケーっす」

「いつでもいいですよ」


私のよびかけにそれぞれの答えがかえってくる。


《スタート1分前》


アナウンスが、時間を刻んでいく……。



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