第3世代ミニ四ガールズ 1ちゃんす!

仮想世界をハイスピードで駆け抜ける、少女たちのレーシング・ロマン!
1chance_jp
1chance_jp

SECTOR-3:TAKUMI-1

公開日時: 2021年10月12日(火) 08:00
文字数:1,142

なんやかんやで会場にいっくぜー!

ボクたちの前にあらわれたのは、あの伝統のサーキット! それと、あんた誰!?

 着替えをしぶってた会長も、いざ着ちゃったら何だか別人みたいなテンションになっちゃって、ボクらからしてみりゃ、はっきり言ってめんどくさい。


「始まるわね! 私たちの熱いミニ四カツドウが! 略して」

「はーい、うん、そうですね、ほら、じゃまになってるから行きましょ行きましょ」

「うむ、いざ参る!」


 あゆみはその辺、会長の扱いに慣れてきたのか、適当にやり過ごしてる。


 しっかし猪俣センパイの用意したユニフォーム。普段着てるロードワーク用のウェアとはかなり違う。ハダカのように軽く、体にフィットしつつ、適度な温度と締め付け感をキープしてる。ま、ひとつ問題があるとすれば、体を動かすわけじゃないから、ミニ四駆と《バーサス》にはまったく関係ないことだけど……。


「あれは!?」


 めずらしく、たま姉が声をあげた。大会出場者用のゲートをくぐって会場に入った瞬間、それがあるのがボクにもわかった。


「鈴鹿。鈴鹿サーキット」


 あゆみが言った。


 メインステージの前、ミニ四駆と同じスケールでつくられた巨大なジオラマ。もちろん、レースは《バーサス》で行われるからボクたちのクルマがここを走るわけじゃない。でも、こうやって実物を立体で見せられると、ここで戦うんだっていう実感がわいてくる。


「あゆみ、すごいな」

「ええ……。」


 立体交差を頂点としたコースの高低差はもちろん、ピットの建物やコース脇に立ってる観覧車までがきちんと再現されていて、ボクとしてはモデラーの目で見てもスゴいと感じる。


 と、そんな考えは割り込んできた声に吹き飛ばされた。


「おーほほほほ、このくらいでビビってるようじゃあ、まだまだね、ルナ!」


 不意に響いた声。近くのはずだけど、姿は見えない。五人できょろきょろしてると。


「ここよここ!」

「ああ!」


 猪俣センパイの指差す先。小さなシルエットがあった。黒っぽい服に、黒い傘。服は……こういうのをゴスロリっていうの?白いフリフリがたくさんついてる。


「久しぶりね! ルナ!」


 失礼にも、そのゴスロリっ娘はセンパイを真正面から指差した。けど。


「……誰?」

「ええっー! 忘れた!? 」

「うん」

「ああー、もう! 志乃ぶよ! 川崎志乃ぶ! 小学校でのライバルよ!」

「あー……?」

「思い出したわね!?」

「……全然」


 志乃ぶ、と名乗ったゴスロリっ娘の脚が崩れる。


「まあいいわ! こんなところで会うのも運命なのかもね! 今度こそ、あんたのそのエラそーな態度を修正してあげるわっ!」

「ん? よくわかんないけど、がんばろうね」

「きーっ!」


 ひとりでわめき散らして、志乃ぶさんはいってしまった。いろんなひとが世の中にはいるもんだ。


《それでは、開会セレモニーをおこないますので、選手の皆さんはステージ近くへおあつまりください》


 アナウンスが、高い天井から響いた。いよいよみたいだ。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート