『《風を踊らせるもの》ユルヴェー=カ』
シャー=ルがイェ=ムーに《色》を描き終え、束の間の休息についたとき、ユルヴェー=カが言った。
「イェ=ムーに億種の《色》がもたらされ、大地は鮮美、大海は清廉にして大空は荘厳なり。これによって我々は世界の輝きを知る楽しみを得た。だが、このイェ=ムーの一切は不動にして不変なれば樸鈍としてこの眼に飽き、我は辟易せり。故に我、一切を動かしめ、変わらしむるものを創らんと欲する」
「それがよい。是非ともそうするがよい」
他の四柱の神々が応え、ユルヴェー=カを促した。
そこでユルヴェー=カはイェ=ムーの大地を踏みしめて舞踏した。するとユルヴェー=カの舞から《風》が生み出された。《風》はイェ=ムーを覆い、存在するすべてのものに《趣》を教えた。大地に居並ぶ諸々の植物は百万の同胞とともに《風》に礼讃するようになり、大空にたゆたう群雲は羇旅への憧憬を起こし、大海は大地への恋慕を抱いた。
こうしてイェ=ムーには《風》が生まれ、イェ=ムーに存在する一切のものは心と体の動きを持つに到った。
そしてまた、この舞踏によってユルヴェー=カの身体から発せられた汗の飛沫がイェ=ムーの大地、大海、大空にあまねく飛散し、これによりイェ=ムーに存在する一切は《香》を発するようになった。
さらにまた、このときユルヴェー=カが踏みしめた土からは《誕生》が、《風》の中からは《成長》が、《香》の中から《死》が生まれた。
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