イェ=ムーの物語

南部鞍人
南部鞍人

肉を燃やすもの ミアー=ニア

公開日時: 2021年10月28日(木) 13:53
文字数:679

『《肉を燃やすもの》ミアー=ニア』


 マー=ユイーイがイェ=ムーに《音》をもたらし終え、束の間の休息についた頃、《誕生ツァ=ハトゥスゥ》の導きにより、世界には《地を行くもの》《空を行くもの》《水を行くもの》の三種の生き物が生まれていた。それらは最初、何を食うこともなく生きることが出来た。それらを殺すものはただ《時》のみであった。

 それを見て、ミアー=ニアが言った。


「イェ=ムーには形が生まれ、それら億種の輝きを放ち、各々に流動し、異なる音色を発するようになった。また三種の生き物が生まれた。だが、これらは時の流れに移ろいゆくまま、のうのうとして覇気なく、我を辟易させる。故に我いま、これらのものどもに命を奪う歓喜を与え、互いを害さしめ、生きるための闘争を行わせんと欲する」


「それは面白そうだ」


 他の四柱の神はいたく感心し、ミアー=ニアを促した。

 そこでミアー=ニアがイェ=ムーに唾を吐くと、イェ=ムーに生きるすべてに種々の甘みと飢えが宿った。これを知った生き物たちは他の種族の《味》を求めて喰らい合うようになった。こうしてイェ=ムーに《味》と《食》がもたらされた。

 またミアー=ニアは最後に、自らの肉体の中から《視るもの》イーサーを吐き出し、自らの伴侶とすると、こう言った。


「ここに我らはイェ=ムーの姿を創造した。お前の役目は我らの創造物のすべてを見守り、またその末路を見届けることだ」


 こうしてイーサーには大いなる使命と、《五柱の大神》に匹敵する権威と、イェ=ムーの天空の玉座が与えられた。

 こうしてイーサーにイェ=ムーのすべての監視を任せたミアー=ニアも束の間の休息についたのだった。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート