『《色を描くもの》 シャー=ル』
ニヤー=オームがイェ=ムーに形を創り終え、しばしの休息についたとき、シャー=ルが言った。
「イェ=ムーが《有》と《無》に別れ、《有》からは《影》が生まれた。これによって我々はものの姿形の相違を知る楽しみを得た。だが、このイェ=ムーの《影》はその輝き単調にしてこの眼に暗く、我は楽しむるに足らず。故に我は《影》をさらに別ち、いよいよ眼に楽しきものを生み出さんと欲する」
「それがよい。是非ともそうするがよい」
他の四柱の神々が応え、シャー=ルを促した。
そこでシャー=ルは自らの髪の毛を、億種のそれぞれ異なった輝きに変えると、それらを筆としてニヤー=オームの創造した《影》達に触れた。大地には静かなる黒、白、黄、朱を描き、山野には眩き翠を描き、大空と大海には清らかなる蒼が与えられた。
こうしてイェ=ムーには億種の輝きがもたらされ、イェ=ムーの《有》なるすべてのものは《色》を持つに到った。
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