イェ=ムーの物語

南部鞍人
南部鞍人

音を歌うもの マー=ユイーイ

公開日時: 2021年10月28日(木) 13:51
文字数:583

『《音を歌うもの》マー=ユイーイ』


 ユルヴェー=カがイェ=ムーに《動》と《風》と《香》をもたらし終え、また《誕生ツァ=ハトゥスゥ》と《成長チャル=ヌストゥ》と《ユェ》の兄弟神を生み終わりて束の間の休息についたとき、マー=ユイーイが言った。


「イェ=ムーに《風》が吹き、《影》と《色》は《動》を得、汗を放ちて《香》を揺らし、また《誕生》と《成長》と《死》が生まれ、世界には変化が生まれた。これによって我々は一切の発生、盛衰、そして消滅を知る楽しみを得た。だが、このイェ=ムーは躍動に溢れていながら、寂然として胸に打ち振るう高揚なく、この耳に飽き、我が楽しむるには足らず。故に我、己が耳を打ち振るわせる、甘美なる響きを創らんと欲する」


「それがいい、是非ともそうするがいい」


 他の四柱の神々は応え、マー=ユイーイを促した。

 そこでマー=ユイーイは、その腹の幅がイェ=ムーに等しくなるまで息を吸い込むと、口から耳に心地よき、美しき音色を吐き出した。

 その響きはイェ=ムーに降り注ぎ、イェ=ムーに存在するすべてのものの体に染み込んだ。この響きを身に浴びたもの達は、いたく面白がり、こぞってマー=ユイーイの真似事をし始めた。たちまち、世界はサワサワと体が擦れる音や、ザザザと水が砂に絡みつく音に満たされた。中でも《風》は時にゴウゴウといい、時にはヒュルルといい、様々な音を立ててみせた。

 こうして世界は《音》を持つに到った。


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