11.　私の好きな野菜　～エイミー視点～

　こんにちは。エイミーだよ。私は今早起きをしてアイリーンと共に家の裏の畑を耕しているの。新しいルージュキャロットを育てるんだぁ。そういえば、みんなはどんな野菜が好き？私はね……全部！でも、中でも一番好きなのがラディッシュなんだ。

　なんでって思うよね？それはねラディッシュはとっても美味しいからなんだよ。それに形が可愛いんだ。丸っこくて可愛いし、色も真っ赤で綺麗だし。それに甘みもあってみずみずしくてシャキシャキしてるから大好きなんだー。

　だから王宮を追放されて宮廷魔法士のアイリーンを見つけた時、アイリーンは下を向いて丸くなってた。あの目立つ赤髪のアイリーンの姿がラディッシュにそっくりだったんだ。

　だから声をかけたら顔を上げた時に目まで赤い目をしてたの。そしたらすぐにピンときちゃったよ。ああ、このお姉さんはラディッシュなんだなって。私が大好きなラディッシュと同じだから、きっといい人。その時直感で思ったの。だって私の勘はよく当たるんだもん。

　あれからアイリーンは私の『なんでも屋』で働いてくれている。もちろんお金を払っているわけじゃないんだけど、住む場所をあげた。そのかわり私の仕事を手伝ってくれてるんだ。そんなことを考えているとアイリーンと目が合う。

「ん？ちょっとエイミー！サボらないでよ。私は肉体労働苦手なんだからさ。こんな朝早くから畑を耕すのは疲れるのよ？」

「ごめんごめん。少し考え事してたからさー。」

「考え事？まあ別にいいわ。ここからそっちはエイミーがやりなさいよ？」

　仕方ないなぁ。やるかぁ。私は鍬を持って再び土を掘り始めた。そしてふと思う。これから先、アイリーンはいつまで私の『なんでも屋』にいてくれるのだろう。いつかはこの村から出て行ってしまうのかな……。

　でも。それはそれで仕方ない。私はアイリーンを高級ラディッシュにしてあげるんだから。この『なんでも屋』で。また考え事をしていると、アイリーンが私の横で土を掘り始める。

「時は金なりよ。エイミー。早く終わらせるわよ。」

「うん！そだね！一期一会だもん！」

「なに？イチゴ？」

「なんでもない！ほらほら。早くやろう！」

　私は元気良く返事をする。先の事を考えても仕方ない。私は今この時間を大切にしたいから。こうして今日も私は、何も変わらずいつも通りアイリーンと共に野菜を栽培するのだ。