「一体何しにここへ来た?」
「…何しに…?」
それはこっちのセリフだった。
なんでそんな格好で、しかも「屋根に」いたのか。
聞きたいことだらけだった。
困惑する俺を見下ろしながら、彼女は手を伸ばしてきた。
「何か願い事をするなら、対価が必要になる」
「…対価?」
「聞いたことはないのか?そこにあるだろう。賽銭箱が」
もちろん、知っている。
賽銭箱…
苔やカビだらけで、使われてる形跡はなさそうだった。
そもそもこの神社には誰も来ていないし、賽銭を入れる人なんて滅多にいないだろう。
っていうか、なんでキミにそんなこと言われなきゃいけないの?!
半ば睨んだようにこっちを見て、金を払えと要求してくる。
お金なんて持ってきていない。
「PayPayならあるよ」と冗談っぽく言うと、「電子マネー??…貴様、この神社がキャッシュレスに対応していると思うのか?」と叱られた。
ポケットを探ってみたけど、やっぱりない。
彼女は項垂れたように俯き、神社の前にある石段に腰を下ろす。
「さっさと帰れ」
「…は??」
「金も無いやつに用はない」
「金も無い…って、お前にどう関係があるんだよ!」
「ほう。童の分際で「お前」とな。口の聞き方には気をつけた方がいいぞ?ここはすでに私の縄張りだ。お前が家に帰らなくとも、きっと森で遭難したと思われるのがオチだろう」
「…なっ、お、脅してるのか!?」
彼女が何者で、どこの子供なのか。
考える時間はあっても、いまいち釈然としなかった。
言ってることの意味がわからない。
出会って早々に何を要求してくるのかと思えば、「賽銭」だぞ…?
神の使いか何かですか??
そう尋ねたら、返ってきた言葉は、そのさらに“上”をいった。
「神の使い…?たわけ!この私こそが「神」だ!見てわからんか??」
冗談にしてはあまりにぶっ飛んでいた。
「神」…?
神って、…キミが?
威張ったように胸を張る彼女を見上げながら、俺はただ呆然としていた。
(ヤバいやつに出会った)
それが、第一印象だった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!