(俺には俺の人生ってもんがあるんだ。お前ら“神さま“には、わからないとは思うけどな?)
「何が「人生」だ。たかだか十数年しか生きていない分際で」
(十数年“も”、な?高校生活なんてあと一年しかないんだぞ?俺の場合、実質あと100日くらいしかない。誰かさんのせいで)
「私と契約したのは、お前の意思だろう?」
(それはそうだけど…)
「だったら文句を言うな。自分で決めたことは、最後まで責任を持て。それが道理というものだろう?」
(ぐぬぬ…)
ヒロは自分の意思で、神器になることを決めた。
元より、神に従うことを望んでいないものに、契約を促すことはできない。
主導権は常に人間側にある。
力を貸す側の神にとって、力を欲しないものに何かを与えることはできない。
需要と供給というやつだ。
ヒロの場合、私に求めてきたのは「心」だった。
人間が神に望むものは多種多様だ。
夢を叶えることを望むものもいれば、生きることそのものを望むものもいる。
お金、恋人、勉強、日々の暮らし——
大半のものは幸せを望む。
自らの人生を明るく照らし出してくれと、手を合わせながら懇願してくる。
しかしヒロの場合は違った。
少なくとも、自分のために私の元を訪れてきたわけではなかった。
ヒロの祖父が残した1枚の『書』。
その文字は掠れて、読み取れない。
死の淵に立とうとしている祖父が、ヒロに言い残したこと。
そのことを、ヒロは探していた。
私に言ったのだ。
言葉の“意味“を教えてくれと。
病に伏す前の祖父が、ヒロに言った言葉。
その「答え」を、私に尋ねてきた。
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