「ヒロ兄!朝だぞ!」
「んー…」
ガラッ!と、襖が開く。
閉め切ったカーテンの隙間から、朝の日差しが差し込んでいた。
「大貴と瑠奈の朝ごはんは作ってるから、あと戸締りよろしく!」
…やべ
今日俺の当番だったっけ…
バタンっと扉が閉じる音が聞こえて、バタバタと理佐が走っていく。
相変わらず元気だな。
高校から女子サッカー部に入ってる関係で、朝練があるっぽい。
まだ7時にもなってないってのに、ジャージに着替えて自転車を走らせてる。
俺だったら無理だ。
そもそも、スポーツは苦手だし。
「にいちゃん起きるの遅い」
「うっせ」
「理佐姉にちゃんとお礼言った?」
「もう出てった」
「ちゃんと言わなきゃだめだよ?」
「わかってるわかってる」
瑠奈と大貴。
俺の妹と、弟。
俺ん家は4人兄弟だった。
妹と弟の他に兄貴がいて、兄貴は今県外で一人暮らしをしてる。
…ってか、目玉焼き??
理佐のやつ、いつの間に覚えたんだ?
元々料理が苦手だったから、冷凍物ばっかりを朝に食べてたんだ。
当番が寝坊したりする時は。
「おい大貴、テレビ見ながらメシ食うな」
大貴は今小6だ。
来年、ようやく中学に上がる。
相変わらず好き嫌いが激しいっていうか、わがままばっかり言うやつで、少し扱いに困ってる。
性格は父さん似で、少しおとなしめな感じ。
根は真面目なんだが、ほっとくとろくでもないやつになりそうで怖いんだ。
ネジが一本抜けてるっていうか?
ゲームばっかして勉強もろくにしないから、成績も下から数えた方が早いんだ。
母さんは基本放任主義だから、誰かが厳しくしとかないと。
反面教師じゃないけど、俺が困ったっていうのもあるからさ?
高校受験の時に、もっと勉強しとけば良かったって。
(ふわぁ…)
…ようやく起きたのかよ
俺より早く寝て、俺より遅くに起きるとか良い身分だな。
ここら一帯の土地を管轄している「神」にしては、随分と情けない体たらくだ。
普段からろくに仕事もしていないから、体が鈍りまくってるんじゃないか?
理佐が作った目玉焼きと、焼きたてのトーストを頬張りながら、朝の支度をした。
俺は理佐と違って、朝から部活があるわけじゃない。
書道部なんてほとんど趣味みたいもんだった。
部員数だってそんなに多くない。
少なくはないが、他の部に比べたら規模が小さい。
サボっても怒られることはなかった。
顧問は顧問で、剣道部との兼任っていう状況だから。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!