DEAD END 〜『神』と名乗るおっさん系女子は、定期的にお賽銭を要求してくる〜

天下をとりに行くぞ!ヒロ!
平木明日香
平木明日香

第9話

公開日時: 2024年11月28日(木) 08:44
文字数:1,163



 「行ってきまーす」



 瑠奈とた大貴が出て行ったあと、俺は神社に行くことにした。


 和茶の“家”であり、職場。


 彼女と出会って、俺の生活はガラッと変わった。


 朝っぱらから学校にも行かず神社に出向くようになったのは、最近の話じゃない。


 「毎日」ってわけじゃない。


 学校に行く日は行くし、勉強だってちゃんとしてる。

 

 ただ、他の人と同じような日常を送っていないことは確かだった。


 1週間のうちに何度か山の中の神社に行って、和茶の「仕事」に付き合わされているからだ。



 『悪霊退治』



 説明すると長くなるんだが、要するに和茶は、『悪霊』と呼ばれる魔物を討伐する仕事に就いていて、その[担当区域]が俺の住んでいる家の周辺の土地っていう話。


 端折りすぎたか?


 説明しようとしても、色々ややこしくて困るんだよな…


 まず“悪霊”ってなんなのかって話なんだが、これはまあ言葉通りの意味というか、「幽霊」とかそういう類のものだ。


 悪霊の発生起源はまだよくわかっていないが、日本全土には得体の知れない疫病みたいなものが流行ってて、それが悪さしているらしい。


 人間はもちろん、生き物全般には寿命があって、あらゆる生物は死後魂になり、黄泉の国へと行くとされている。


 黄泉の国っていうのは、「あの世」のこと。


 一度は聞いたことがあるんじゃないかな。


 身近な誰かが亡くなった時、亡くなった人の魂が成仏して、天国に行くって。


 地方によって呼び方や考え方が変わったりするから、一概には言えないかもしれない。


 ただまあ、要するにそういうことだ。


 あの世でも天国でも、呼び方はなんでもいい。


 生き物はみんな、死んだら「魂」になる。


 肉体を持たない幽霊ってやつ。


 悪霊は、生き物の魂が魔物に進化したものだって解釈すればいい。


 厳密には少し違うみたいだが、俺も詳しいことはわからないんだ。


 悪霊っていう存在そのものが、世界の「病気」だっていうこと以外は。



 (今日は街中に行くぞ)


 「は?なんで??」


 (この前取り逃したΔ(デルタ)がいただろう。ヤツを追う)


 「…追うって言ったって、管轄が違くね!?」


 (少しくらいなんだ?ヤツらを討伐するのが私たちの仕事だろう)



 …いやいや、お前の仕事な?


 さらっと俺も含めんな。


 「Δ(デルタ)」っていうのは悪霊の別称で、悪霊に纏わる全ての魔物を指す言葉になっている。


 つい先日のことだった。


 人型のデルタが出現し、管轄内のフィールドで戦闘を繰り広げていた。


 手強かったんだ。


 想像以上に。


 結局街中に逃げてしまって、管轄の外にまで行ってしまった。


 そのことはもちろん、上層部には連絡した。


 和茶を含む、各管轄の神々を指揮する司令本部『大天門』の情報通信課には、管轄のラインを超えたために戦闘を中断したことは伝えていた。


 対応としてはそれで十分なはずだった。


 管轄を超えて戦闘を行う場合には、事前に申請を行う必要があるはずだし…



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