単刀直入に話そう。
和茶、——つまり、目の前にいるコイツは、俺たちが俗に言っている「神」の1人であり、超常的な存在である。
…んー、いや、まあ、信じられないのはよくわかる。
俺だっていまだに信じられない。
神なんていないし、そんな存在についてを考えることすらバカバカしい。
ただ、あの日からだった。
和茶とあの神社で出会った日から、奇妙な日々が始まった。
もう6年目になる。
出会ってから、一緒に過ごし始めて。
もうそんなに経つのかって思う。
6年って言ったら、小学校に入学して卒業するまでの期間だ。
俺の人生で言ったら、半分とちょっとの時間だ。
そう考えるとちょっとやだな…
和茶のせいで俺の人生がめちゃくちゃになった。
詳しくは省くが、コイツのせいで周りからは“クズ”呼ばわりだ。
プライベートなんてあったもんじゃないんだ。
学校生活だって、休みの日だって…
(好きなんだろう?)
「あ?」
(男だったら、少しは勇気を出せ)
「…はいはい」
(私は少し眠るから、くれぐれも邪魔をするなよ?)
「…はぁ」
何が“邪魔をするな”、だ。
そっくりそのまま返してやろうか?
さんざん人の邪魔をした挙句、余計なおせっかいまで働きやがって。
和茶との最悪の日々を誰かに相談したくても、相談できる人間が周りにいない。
何人かは霊感が強い奴がいて、和茶のことを認識してる人もいる。
友達だったり、理佐なんかがそうだ。
理佐っていうのは親戚の子で、俺とは2つ離れてる。
元々妹と仲が良くて、ほぼほぼ毎日家でつるんで遊んでる。
俺のことを「ヒロ兄」って呼んでくる。
実の兄貴じゃないんだが、理佐のとこは女兄弟しかいないから、どうも俺のことを実の兄のように慕ってくる。
めちゃくちゃ霊感が強いせいで、和茶の存在を知っていた。
かといって、俺みたいにはっきり見えるわけじゃない。
あくまで“そこにいる”ってレベルで、気配を感じ取っている程度の話だった。
…はぁ
今日はチャンスだったんだろうか…
お腹は空いてるんだが、どうも箸が進まない。
先輩は俺のことをどう思ってるんだろうか。
嫌いじゃないとは思うんだ。
じゃなきゃ、デートの誘いになんか乗らないだろうし。
「ラインを送った」って言われた時はマジでビビった。
殴ってやろうかと思った。
よりにもよってあの「先輩」に送って、挙句感謝しろとか、どの口がほざいてんだよって感じだった。
和茶が言うように、今日のお礼とか言った方がいいんだろうか?
いやいや、でも…
ピコンッ
スマホと向き合っていると、先輩から連絡が来た。
今日の「デート」のことだった。
まさか…
そう思い、嬉しさのあまりスマホを落としそうになる。
『楽しかった』
文面には、そう書かれてた。
多分お世辞だ。
楽しかったなんて、どこのどの場面を切り取ったらそう思えたんだ…?
我ながら最悪だった。
誰がどう見ても”失敗“だった。
それなのに…
返信の文章を考えるのに、1時間くらい使った。
結局当たり障りのない言葉を使って返すことにした。
文章を打つだけで、こんなに緊張するのは初めてだった。
和茶が寝てて良かった。
起きてたら、また茶々を入れられるに違いないからだ。
ったく、呑気なもんだよ
神のくせにパジャマなんて着んなっつーの。
“神聖な存在だ”って言うんなら、もう少し品性ってもんをだな…
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