DEAD END 〜『神』と名乗るおっさん系女子は、定期的にお賽銭を要求してくる〜

天下をとりに行くぞ!ヒロ!
平木明日香
平木明日香

第7話

公開日時: 2024年11月26日(火) 08:41
更新日時: 2024年11月26日(火) 08:45
文字数:1,329



 単刀直入に話そう。



 和茶、——つまり、目の前にいるコイツは、俺たちが俗に言っている「神」の1人であり、超常的な存在である。


 …んー、いや、まあ、信じられないのはよくわかる。


 俺だっていまだに信じられない。


 神なんていないし、そんな存在についてを考えることすらバカバカしい。


 ただ、あの日からだった。


 和茶とあの神社で出会った日から、奇妙な日々が始まった。


 もう6年目になる。


 出会ってから、一緒に過ごし始めて。


 もうそんなに経つのかって思う。


 6年って言ったら、小学校に入学して卒業するまでの期間だ。


 俺の人生で言ったら、半分とちょっとの時間だ。


 そう考えるとちょっとやだな…


 和茶のせいで俺の人生がめちゃくちゃになった。


 詳しくは省くが、コイツのせいで周りからは“クズ”呼ばわりだ。


 プライベートなんてあったもんじゃないんだ。


 学校生活だって、休みの日だって…



 (好きなんだろう?)


 「あ?」


 (男だったら、少しは勇気を出せ)


 「…はいはい」


 (私は少し眠るから、くれぐれも邪魔をするなよ?)


 「…はぁ」




 何が“邪魔をするな”、だ。


 そっくりそのまま返してやろうか?


 さんざん人の邪魔をした挙句、余計なおせっかいまで働きやがって。


 和茶との最悪の日々を誰かに相談したくても、相談できる人間が周りにいない。


 何人かは霊感が強い奴がいて、和茶のことを認識してる人もいる。


 友達だったり、理佐なんかがそうだ。


 理佐っていうのは親戚の子で、俺とは2つ離れてる。


 元々妹と仲が良くて、ほぼほぼ毎日家でつるんで遊んでる。


 俺のことを「ヒロ兄」って呼んでくる。


 実の兄貴じゃないんだが、理佐のとこは女兄弟しかいないから、どうも俺のことを実の兄のように慕ってくる。


 めちゃくちゃ霊感が強いせいで、和茶の存在を知っていた。


 かといって、俺みたいにはっきり見えるわけじゃない。


 あくまで“そこにいる”ってレベルで、気配を感じ取っている程度の話だった。


 

 …はぁ



 今日はチャンスだったんだろうか…


 お腹は空いてるんだが、どうも箸が進まない。


 先輩は俺のことをどう思ってるんだろうか。


 嫌いじゃないとは思うんだ。


 じゃなきゃ、デートの誘いになんか乗らないだろうし。


 「ラインを送った」って言われた時はマジでビビった。


 殴ってやろうかと思った。


 よりにもよってあの「先輩」に送って、挙句感謝しろとか、どの口がほざいてんだよって感じだった。


 和茶が言うように、今日のお礼とか言った方がいいんだろうか?


 いやいや、でも…



 ピコンッ



 スマホと向き合っていると、先輩から連絡が来た。


 今日の「デート」のことだった。


 まさか…


 そう思い、嬉しさのあまりスマホを落としそうになる。



 『楽しかった』



 文面には、そう書かれてた。


 多分お世辞だ。


 楽しかったなんて、どこのどの場面を切り取ったらそう思えたんだ…?


 我ながら最悪だった。


 誰がどう見ても”失敗“だった。

 

 それなのに…




 返信の文章を考えるのに、1時間くらい使った。


 結局当たり障りのない言葉を使って返すことにした。


 文章を打つだけで、こんなに緊張するのは初めてだった。


 和茶が寝てて良かった。


 起きてたら、また茶々を入れられるに違いないからだ。



 ったく、呑気なもんだよ


 神のくせにパジャマなんて着んなっつーの。


 “神聖な存在だ”って言うんなら、もう少し品性ってもんをだな…

 


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