辛そうに言葉を切ると、円佳はショックで言葉が出なくなっていた。
カオルが続ける。
「転んで打ち付けて腫れたとかじゃなく、故意的に暴力を振るわれたように、色々な箇所が腫れてた。それを隠すように帽子を被ってたから、顔ははっきりと分からないんだ」
「虐待?」
「リストちゃんのプライベートを見たわけじゃないから分からないけど、常識的に考えると、可能性が高いよね」
「学校は行ってないみたいだから、いじめではないと思う」
「そろそろ秋だけど、夕方になってもそこそこ暑いじゃない? 特に今日は晴れてたから暖かかった。なのに、長袖を着てたんだ。
もしかしたら、顔だけじゃなくて、体中に痣があるのかもしれない」
「虐待を受けているんだとしたら、誰から受けてるんだろう?
もしかしたら、人見知りが激しくなってしまった原因が親子関係とかにあるんじゃないかって思って探りを入れてみたけど、そんな感じはしなかった」
「どんな風に探りを入れたの?」
「お母さんのことが好きかって聞いたら、あっさりと好きだって答えてくれた。女手一つで育ててくれてるママに感謝してるって言ったリストに、嘘は感じられなかったよ」
「どうして、女手一つなのかは聞いた?」
「そこまでは聞いてない」
「そうなると、父親が今どうなってるのかが問題ね。亡くなっているのか、離婚しているだけなのか。生きているとしたら、父親が母親の目を盗んで虐待してるかもしれない」
「それだったら、母親が虐待に気づくんじゃない? 顔が腫れてるんだから」
「母親が気付いていても、守りきれてないのかもよ。母親は必死に父親から守ってくれているけれど、父親は目を盗み虐待を続けている。もしくは、母親はもっと酷い暴力を受けているとか」
「そっか、だとしたら母親を慕っているのも説明がつくね」
同意してから、円佳はリストと初めて会った時を思い出しながら、自分に説明するように呟く。
「やっぱり、虐待を受けてるから人を避けちゃうんだ」
「そう確信できる根拠は?」
「リストと初めて会った時、リストが泣いてしまったから、ハンカチで涙を拭ってあげようとしたら、激しく拒絶されたの。
顔が腫れているって知られたら気を遣わせてしまうし、年頃の女の子だもん。いくら私の目が見えないからって、顔が腫れてるって知られるのは恥ずかしかったんじゃないかな」
「目が見えない円佳になら、虐待を受けているってばれない。いや、腫れあがって醜くなってしまっている顔を見られないで済むから、顔にコンプレックスがなくなって、楽に話が出来るのかもしれないね」
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