時間を確認せずに、お腹が空いてきたらキッチンに移動し、カップラーメンを作った。
お昼は面倒なので、野菜を入れてインスタントラーメンを作るのは気が滅入る。その点、カップラーメンはかやくや具材が入っているので、いつもカップラーメンを選んでしまう。
部屋に戻ると、カップラーメンを食べながら、ノートに落書きをした。
特に目的のない、何も意味を持たない絵がノートに埋め尽くされていく。
その絵は、精神鑑定に持って行っても精神が病んでいると診断される恐れがない、極々平凡な絵。テストの裏に書かれているような、女性特有の可愛らしい絵だった。
昼食を終えしばらく休むと、晩御飯の準備を始めた。
母が適当に買ってくる食材を冷蔵庫から取り出し、それから献立を決め調理を行う。
献立が決まると、自室から包丁を持ってきて、野菜を切った。
以前はキッチンにも包丁があったが、とある事情から、キッチンに包丁を置かないようになった。
不便だか、仕方ない。
料理を作り終えると、自分と母の分をお皿に分けて、ラップをかけてから自室に戻る。
時刻は午後三時。まだ少し早いなとため息をついてから、リストは鏡を見た。
鏡には、ショートカットの、際立って不細工でも美人でもない少女の姿が映るはずだった。
極平凡な少女の姿が映るはずだった。
しかし、鏡に映ったのは顔中が腫れあがっている、決して幸せな生活をしているとは言えない少女の姿。
リストは、鏡に映っている少女が別人であると願いながら、自分の顔に手を当てる。
鏡の中の少女は、リストを真似るように手を動かす。
リストの手が顔に触れると、鈍い痛みが走り、鏡に映る姿が自分自身だと身を持って教えられる。
この腫れあがっている顔が、自分の顔なのだと。
ベッドにかかっている毛布を乱暴に握り、怒りを込めて鏡にかけた。
鏡は輝きをなくし、真実を写すものから、毛布をかける道具に成り下がる。
午後四時にアラームが鳴るように目覚ましをセットし、テーブルゲームを楽しむ。鏡に対する怒りからか、それとも午後四時が近付いている喜びからかゲームに集中できず、成績は珍しくも芳しくなかった。
将棋を行い、ようやく思い通りの展開に持ち込み、次の一手で王手がかけられる場面でアラームが鳴った。
良い展開にもかかわらず、リストは迷いなくゲームを止め、帽子を被って外出用の格好をする。
帽子を被っている姿を確かめようと鏡を見るが、鏡は毛布を被っており本来の役割を果たせなくなっている。
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