「その作戦に異論はないけど、私は幽霊部員じゃなくて、本気で一緒に劇をやらないか舞を誘ってみる。やっぱり、舞が一緒じゃないと楽しさが違うから」
カオルは、そう言いながら空いている舞の席を見た。
「私は、顧問の先生を探すよ。保健の塚本先生とは結構話してるから、最初にあたってみる」
「そうなると、私は慎弥に頼めばいいんだね。簡単だ」
各自、役割がはっきりしたところで、休み時間の終わりを告げる予鈴がなる。
予鈴がなるとすぐに、疲れ果てた表情を浮かべ、舞が戻ってきた。
◇
放課後、私達は遊びに行く予定を変更し、自分達に科せられた役割を全うすることになった。
るんは慎弥君と下校し、ついでに幽霊部員の件を頼むらしく、いち早く学校を出た。
カオルは舞と一緒に図書室で勉強し、るんと同様、帰り道で演劇の話を切り出すらしい。
今の舞は、ほとんどの時間を勉強に費やす覚悟で勉強をしているが、そんな舞でも、帰り道で歩きながら単語帳を捲ったりしないだろうから、そのタイミングで切り出すと言っていた。
クラス一の学力を誇るカオルが図書室で勉強するのも、舞に勉強を教え、貸しを作るのが目的かもしれない。
二人がうまくやれるかどうかは、特にカオルがうまくやれるかどうかは分からないけれど、私は私の役割を果たさないとならない。塚本先生に断られたら、他に親しい先生がいないので、顧問の先生探しは難しくなってしまう。
塚本先生が承諾してくれるのを願うばかりである。
ノックをして、塚本先生の返事を待ってから保健室に入る。
いつも朱理が寝ているベッドに視線を向けると、カーテンが閉まっていて朱理の姿は見えなかった。
「あの、塚本先生。頼みたいことがあるんですけど」
と声をかけると、朱理の特等席になっているベッドのカーテンが勢いよく開き、朱理が嬉しそうに私を見た。
声を掛けられたわけではなく、カーテンが開かれただけなのだけれど、話の腰を折られた形になった私達は、誰も言葉を発することが出来なくなっていた。
そんな、しばらく続いた静寂を打破したのは、塚本先生だった。
「頼みって、なに?」
朱理を一瞥すると、朱理は全てを悟ったようにうなずいた。
話を進めていいってことだろうと解釈した私は、早速本題を切り出した。
今度の文化祭で劇をやりたいけれど、クラス単位で行うのは反対にあい不可能だと思うので、友達と一緒に演劇部を立ち上げたいと事情を話す。
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