みんな、流れる歳月と共に変わっていく。
音だけではどんな髪型をしているか分からないし、どんな服装をしているかだって分からない。
もちろん、私だって容姿が変わっていくが、鏡を見れないので、自分がどんな顔をしているかだって分からないのだ。
「なんか、気を失ってたからか分からないけど、凄く眠いの。悪いけど、眠ってもいいかな?」
両親は、私の嘘を信じ了承してくれた。
その際、近くにいる私の担当医だと思われる人物に、許可を取っていた。
この担当医は、元からここにいたのか、お父さん達が病室に戻ってきたとき、一緒にきたのか分からない。
そう、分からないのだ。
私は今、何人部屋で眠っているのか。部屋の明るさはどれぐらいなのか。この部屋の事は、想像の助けになる【何か】がないと何も分からない。
カオル達が帰ったので、カオル達がここにいないのは分かる。
お父さん達が戻ってきたから、お父さん達がここにいるのは分かる。
お父さんが担当医と話したから、担当医がここにいるのも分かる。
それ以外は、ほとんど何も分からない。
なんだか、今は誰とも話をしたくない気分だった。
話をする度、相手に気を遣わし、相手に気を遣わせてしまっている自分が嫌になる。
気にしないでと言っても、気にしないでいられる状態ではないと分かっているので、眠りに逃避するしかこの心が歯がゆい状態から逃げ出す術がないように思える。
両親のいる方に背を向け、目を閉じる。
目の前の風景は変わらない。
本当に目を閉じているのか、それとも、まだ目は開いていて、何も見えないだけなのか、感覚が分からなくなる。
本当は、まったく眠たくなかった。
意識を取り戻してから時間を確認していないから分からないけれど、カオル達四人が集まっていて、それぞれ各自に帰ろうとしてもお父さんたち大人が何も言わなかった状況から察するに、そんなに夜も更けていないはずだ。
だが、居座りそうな舞が素直に帰り、私の怪我もかなり重い。
夜の九時ぐらいかな?
そうだとしたら、眠くないのも無理がない。
狸寝入りをしていると気づかれないように、時折寝返りを打つ。そんな演技を繰り返していると、突然、お母さんのすすり泣く声が聞こえた。
私が眠りにつくまで、泣くのを堪えていたのだろう。
お母さんは、円佳が可愛そうだとすすり泣き、お父さんは、お母さんを励ましている。
二人の会話を聞き、私は羨ましいと感じた。
愛し合い、支えあう二人の関係は羨ましく、眼の見えない私に人生を共にする人は現われるのだろうかと、不安になる。
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