「恥ずかしかったけど、自分から告白したよ。だって、ずっと『好きです』て視線を送ったり、行動を起こしたりしても気付いてくれないから、言葉で伝えないと駄目だなって」
「逆ナンじゃん」
「逆ナンじゃなくて、告白!」
るんにしては珍しく、声を大にして舞の発言を否定する。
なんでもない、友達といる時間が楽しかった。たまたま同じ辺りに住み、たまたま同じ高校に通い、たまたま友達になった関係。偶然が生んでくれたこの関係の期限が、そろそろ切れてしまう。
店内の時計が進んでいく。あの秒針が何回円を描いたら、私達は卒業するのだろう?
それは分からないが、卒業まで半年と少し。来年の今頃は、こうして四人で集まる機会は減り、新たに出来た仲間と過ごす時間が増えるのだろう。
「明日から、学校だね」
私の耳には、三人の会話が届いていなかった。ただ、不意に独り言のように呟いてしまった。
「なに、辛気臭いことを言ってるの」
舞が、呆れたように言う。
「もうすぐ、卒業だなと思って」
「卒業の前に、受験でしょ。少し気合入れてやらないと、落ちて浪人になるよ」
「一番やばいのは、舞だけどね」
「カオルはいいよなー 受験しなくていいんだから」
今の時代、就職の方が大変だと思うが、舞はそう愚痴る。
「舞だって、受験じゃなくて就職を選べばいいじゃない」
「親が許さないだろうし、受験は嫌だけど大学には行きたいの」
「舞は、どうして大学に行きたいの?」
大学に行きたい、それは=高校を卒業したいという意味ではないと分かっているが、私はそう問いかけてしまった。
大学には、今通っている高校よりも良いところがあるのだろうか?
「一度は経験したいじゃん、キャンパスライフってやつを。学歴も大卒になるし、四年間働かずに大きな態度が取れる」
「そういう奴が、日本を悪くするんだよ」
カオルが、舞の頭を軽く小突いた。
「私は、慎弥が東京の大学を受けるから着いて行く形かな。レベルの高いところを狙わなければ、今の学力で充分受かるって言われてるし」
「はいはい、お熱いことで。で、円佳はどうして大学に行きたいの?」
舞の問いに、私は何も答えられなかった。
義務教育と違い、高校と大学には受験がある。ただ、それだけの違いだと考え、通うのが当たり前だと高校に通っていた。
中学を卒業するとき、周りの人達やクラスメイトは全員が高校に受験したが、今回は違う。カオルのように就職組がいる。
自分の意思で大学受験をせずに就職を選んだカオルを見ていると、私も進路について考えさせられるようになった。
考えなくてはいけない、これからの未来。でも今は、みんなと楽しく過ごし、悔いのない高校生活を送りたい。そんな甘えた考えしか出来なかった。
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