カオルがリストの顔を見に行ったのを円佳は知っているが、その辺りは円佳のことを思い嘘を吐く。
「じゃあ、前原さんはどうして知ってるんですか?」
「昨日も、歩道橋に行ったんだ。そしたら、リスト姫が来なくて、リスト姫の母だと名乗る人が歩道橋に現れた」
「それは、私が頼んだんです。いつ迄も円佳さんを待たせてしまったら悪いから、風邪を引いたと伝えてと」
「リスト姫のお母さんは、確かにリストは風邪で来られないって言ってた。でも、私はこっそり覗き見てリスト姫の顔が腫れてるのを知ってるから、何か、とてつもなく良くないことが起きてるんじゃないかって不安になったの。
で、円佳とリスト姫のお母さんが別れた後、リスト姫のお母さんに接触して、事情を聞き出したの。ちゃんと、お見舞いに行く許可も取ってある」
「そうなんですか…お母さんは、何も言ってなかったけど」
「私がお見舞いに行くのを、リスト姫には言わないでって口止めしておいたの。私が来るって事前に知っていたら、どうしても緊張しちゃうでしょ? その点、何も知らないで私と逢えばパニックにはなるだろうけど、その分、緊張は軽くなるから」
突然、リストは携帯ゲーム機に写った自分の顔を思い出した。
醜く腫れ上がった顔。頬がおたふく風邪のように腫れ上がってしまっている顔を。
「んっ、どうしたの? リスト姫?」
かけ蒲団を鼻の辺りまで被ったリストを見て、カオルが問いかける。
「いや、その」
「私が恐い? ちょっと、パニックになっちゃった?」
「いや…その…あの…」
動揺の色を隠せないリストは、口吃り、意味のない言葉しか言えなかった。
「恐がらなくても、大丈夫。私はリスト姫の味方だよ。リスト姫が私を恐がって、どんなに冷たい態度を取ったって私はリスト姫を嫌いにならないし、怒ったりしない」
カオルは、リストの目をじっと見ながらそう告げ、リストは、見とれるようにカオルの瞳を見つめた。
「あの、さっきから気になってたんですけど、どうして、リスト姫って呼ぶんですか? やっぱり、円佳さんの物語に出てくるお姫様と呼び名が同じだから?」
「それもあるけど、リストが私達にとってのお姫様だからかな。
毎晩、電話で円佳と話してるんだけど、その時の話は、ほとんどがリストの事。だから、リストは私達にとってのお姫様なの」
「そんな、私がお姫様だなんて」
「そう、謙遜しないでよ。リスト姫はとても可愛いよ。自信を持っていい」
「こんな、醜い顔のお姫様なんて」
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