学校に着くと、突然足に鉛をつけられたように足取りが重たくなった。
今日は、高くそびえ立つ校舎に異様な威圧感を覚えてしまう。
気を引き締め校舎に入り、保健室に向けて足を進めた。
朱理は学校に、保健室に来ているだろうか?
ノックをし、塚本先生の返事を待ってから保健室に入る。
朱理がいつも眠っているベッドは、カーテンが閉まっているので、誰かがいるかどうか分からない状態だった。
大概、誰も使用していないベッドのカーテンは開かれているので、誰かが使用している可能性は高い。
いつもは、朱理が使用しているベッドのカーテンが閉められていたら朱理が来ていると言い切れたが、昨日の出来事があるため、朱理が来ているとは言い切れない。
「あの、朱理は?」
そう問いかけると、塚本先生は渋い表情で首を振る。
「まだ来てないの」
「そうなんですか」
気のない返事をする私の視線は、いつも朱理が使っているベッドに向いていた。あのベッドを使っている人は病気なのだろうか? それとも怪我なのだろうか?
どっちにしたって、朱理が来るまでに場所を退いてもらいたいと思ってしまうのは、随分と自分勝手な言い分だろう。
「あぁ、あのベッドね。あのベッドはいつも本条さんが使ってるから、他のベッドが埋まるまで予約の意味を込めてカーテンを閉めてるの」
視線の先に気がついた塚本先生が、そう教えてくれた。現在、ベッドは使用されていないので、朱理がいつ来ても大丈夫だ。
「本条さんが来たら知らせに行くから、教室に戻っていいわよ」
「そんな、悪いです」
「気にしないで。ちょっと保健室を空けるぐらい平気よ」
「わざわざ知らせに来てもらうのは悪いし、もう一つ、知らせにこられるとまずい理由があるんです」
「なに?」
「昨日の出来事で凄い怒ってる友人がいるから、知らせに来てもらったら、その子が保健室に殴りこみに行ってしまうかもしれないんです」
「怒ってる友達って、昨日一緒にいた子?」
首を横に振り、るんではないという意思表示をする。塚本先生もるんが怒っているように見えなかったのだろう、問いかけながらも半信半疑だった。
「知らせに行くのがまずいなら、放送で呼んでもらいましょうか? 保健室ではなく職員室に来るように」
「それでも、着いて来ると思います」
「相当怒ってるのね」
「はい…だから、休み時間の度に、なるべく後を付けられないように顔を出します」
「そうね…それしかないみたいね」
「朱理が来たら、よろしくお願いします。今の朱理は、以前より傷つきやすくなってるみたいなんで」
「任せて」
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