「そんなの、分からないよ。実際にそういう状態で会ってみないと」
そう言って、舞は立ち上がる。
「外に出よう。ここじゃ、話しづらい」
舞の誘いを、誰も拒まなかった。それはきっと、話を進展させるための行動だからだろう。話を避ける為に外に出るのなら、誰もこの場を動かなかったと思う。
外に出た私達は、学校に向かっていた。公園や喫茶店など他者がいる場ではなく、四人だけで話し合える場所に行こうと話が決まり、その結果、学校が選ばれた。
学校内には、部活に励む生徒が多数いたが、校舎に入り自分達の教室に入ると、思惑通り誰もいなかった。
うちの学校のエアコンは全て職員室で管理されており、自分達で点ける事ができないので、今はエアコンが利いていない。
私達は自分の机の中からうちわ代わりになるものを取り出し、暑さを少しでも和らげようと扇いだ。
教室に入ってから、誰も口を開かなかった。一度切ってしまった会話を再開させるタイミングが上手く掴めない。
外からは、野球部の気合が入った声が聞こえる。夏の甲子園も終わり、三年生は受験勉強の為に引退したのか、それとも甲子園以外に大きな大会があり、まだ部活に励んでいるのか、野球に詳しくない私には分からなかった。
「不安とかって、ないのかな?」
舞が、ポツリと言葉を零した。
空耳だったのではないかと思えるほど、細い声。
真意を確かめるためにカオルとるんを見てみた。二人は舞を見ている。空耳ではなかったようだ。
舞は、朱理と一番付き合いが長い私に答えて欲しいらしく、私に視線を向けていた。
「たぶん、ないと思う。将来に期待してないって言ってたから」
「そうかな?」
私の返答に反応したのは、舞ではなくるんだった。
「期待してないのと、不安がないのはまったく別だよ。期待する心があるから、将来に不安を抱いていても、その期待で不安を消すこと、紛らわせることが出来る」
期待で不安を消すことが出来る。それは、不安より期待の方が大きい場合の話し。おそらく朱理は、期待より不安の方が大きいから、将来に期待をしていないのだろうと言いたいらしい。
「でも、その朱理って子は不安を表に出さないんでしょ?」
舞は、私とカオルの中間に視線を向け、特定の人を見ずに問いかけた。
視線が特定していない為、どっちが返事をすればいいか迷っていると、舞が言葉を続けた。
「円佳とるんは、将来に不安はないの?」
「私だって、将来に不安はあるよ。今はみんながいるから明るくやっていけるけど、根が引っ込み思案だから、社会に出たら適応できるのかなって」
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