夏が終わろうとしていた。
夕方になると、時折半袖では肌寒く感じる風が吹く。
今年は冷夏だったらしい。
例年よりも早い夏の終わりを感じていると、私の親友である荒瀬舞の心も燃え上がるような夏が終わり、涼しい風が吹いているようだった。
「横浜の男達は、見る目がないのよ」
私達は、高校最後の夏休みを横浜で思い出を残そうと、夏休み最後の三日間を横浜で過ごした。
つい先程帰ってきた私達は、小腹が空いたのでロッテリアでカロリーを補給している。
「そんなに、男に躍起にならなくたっていいじゃない。横浜自体は楽しかったんだから」
目を血走らしている舞に、私は励ましの意味を込めて前向きな発言をした。
「だって、そろそろ受験だよ。今のうちに彼氏の一人や二人作っておかないと、勉強だけに追われる毎日になっちゃうじゃない」
「二人も作ったら、勉強どころじゃなくなるよ」
「それは言葉のあや」
「彼氏なんて作らなくたって、私達がいるじゃない」
「受験に立ち向かうために必要なのは、女友達からの友情じゃなくて、彼氏からの愛情なの」
私の意見を真っ向から否定するので、説得を諦めてストローに口をつけた。
乾いた喉を潤っていると、私と舞のやり取りが終えたのを見て、カオルが口を開く。
「舞は、横浜に行くからって意気込みすぎなんだよ。行く前にも言ったでしょ。都会に出るからって意気込む田舎者が、一番浮いた存在になるって。カジュアルでナチュラルが一番だよ」
三ヶ月前に横浜から長野に引っ越してきた前原カオルが言うと、島崎るんも『初日の舞は、ケバかったもんね』と小声で相槌を打った。
「でも、今回は本当、カオルに助けられたよ。なんて言っても宿泊費がただで済んだんだから、持つものは友だね」
今回の横浜旅行で私達は、ホテルなどに泊まらず、カオルの親戚の家に厄介になった。
四人が一斉に押しかけるのは無理があるので、私とるん、舞とカオルのペアに分かれて別々の家に厄介になった。
「カオルの親戚に、いい男がいればよかったんだけど」
せっかく話を変えようとしているのに、舞はまだ恋人が出来なかったのを引き摺っている。横浜では一番はしゃいでいたくせに、帰ってきた途端、空気の抜けた風船のようにしぼんでしまっている。
「私は楽しかったな。色々とカエルのグッズも買えたし」
るんは、カエルのグッズを集めるのが趣味である。行く先々で可愛らしいデザインのカエルグッズを買って喜んでいた。
ちなみに、本物のカエルは大の苦手だ。
「慎弥へのプレゼントも買えたし」
私達の中で唯一彼氏持ちのるんは、舞のイライラを煽ってしまいそうな発言を悪気なくこぼす。
「どうして、るんなんかに恋人が出来て、私には出来ないんだろう」
「恋人は、出来るものじゃなくて作るものだよ」
「えっ、るんって、自分から告白したの?」
大人しいるんが大胆なことを言うので、カオルは意外そうに問いかける。正直なところ、私もるんから告白するなんて夢にも思わなかった。
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