「村人役をどうするか以外は、考えてるよ。私達だけで作るのもいいけど、それは舞台上だけでいいと思うの」
「まあ、そうだけど。手伝ってもらえるかな? そもそも、受験で忙しくて、文化祭に時間を割く人がいないだろうから、私達だけでやろうってことになったんだし」
「部に入ってもらわなくても、帰宅部の人に話しかければ少しぐらいは手伝ってくれるんじゃないかな。三年じゃなくて二年生に手伝ってもらってもいいし」
「なるほど」
「それと、これはみんなに反対されるかもしれないし、相手側もOKするか分からないけど、今度の演劇は合唱部との合作にするのはどうかなって」
「驚いた。そんな発想は私にはなかったよ」
「お客さんが座る席にね、あらかじめ合唱部の部員に座っておいてもらうの。それで、物語の展開上、合唱が必要な場面になったら、突然立ち上がって合唱を始める。
舞台から客席に向けて合唱するんじゃなくて、自分のすぐ近くの席から四方八方と合唱の声が聞こえたら、臨場感があると思わない?」
「それ、いいね。合唱が必要な場面はなるべく台詞を少なくして、合唱で台詞が聞き取りづらいって状況を作らないようにすれば、最高だよ」
「そっか、台詞が聞き取りづらくなるか。そこまで考えてなかった」
「その辺は、具体的に舞台の形が見えてきてから話し合おう。まだ、舞台に出る人数だって決まってないんだから」
「そうだね。いい加減、舞台に出る人数ぐらいは決めないと、脚本も書けないし、稽古もできないよ」
まぁ、私が脚本を書くわけではないけど。
「実は言うと、脚本はもうできてるんだ。舞が参加するバージョンと、参加しないバージョン」
「どんな感じの話になってるの?」
と問いかけたところで、るんからメールが送られてきた。そのメールは約束の時間より少し遅れるという、面白いほど予想通りのものだった。
後十分ほどで来られそうだというメッセージだったので、その間に劇の内容を聞く。
カオルの持ってきたノートは文字で埋め尽くされており、小説ではなく脚本になっている。ト書きもびっしりとされていて、随分と本格的なものになっていた。
顔を寄せ合いノートを見つめ、舞台を思い浮かべながら物語を聞いていく。以前聞いた話だとロマンの欠片もなかった物語が、カオルのアレンジのおかげで、少しありがちなもののロマンのある話になっていた。
◇
るんが合流し三人揃った私達は、舞の家を訪ねた後に市民図書館に向かっていた。舞は、図書館で勉強しているらしい。
図書館に行けば舞に会えるが、図書館で朱理の話をして大丈夫だろうか? 感情が高ぶり怒鳴りだしたら、周りから顰蹙を買ってしまう。
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