良く晴れて、動かなくても汗を掻いてしまう、肌に悪い直射日光の射す校庭に出ると、舞はやる気を抑えきれないようでいち早く準備運動を始めている。
授業が始まったら皆やらされるのに、休み時間の今から念入りに体をほぐしている。
慣れない勉強付けの毎日だったので、授業として体を動かせるこの時間は舞にとっていい気晴らしになるかもしれない。
授業が始まり、準備運動を終えてから六十メートル走が行われた。
一組目に選ばれた舞が、意気揚々とスタートラインにつく。そんな舞を見ていると、横からカオルが話しかけてきた。
「朱理のことなんだけど」
舞は、スタートラインについている為、ここにいない。このチャンスを狙っていたようだ。
「私と舞が劇をやろうって強引に誘うから、円佳とるんは優しく接してあげて」
「いいの、それで? カオルと舞は汚れ役だよ」
「かまわないよ」
カオルは無償の愛ではなく、自分にマイナスになってでも相手に愛を捧げられるらしい。それに引き換え私はどうだろう? 相手を傷つけたくないと言い訳を用意し、自分が相手を傷つけてしまうのを恐れているだけなんじゃないのだろうか。
スタートを告げる笛の音が、耳障りに鳴り響く。スタートラインについていてたランナー達は、笛の音から逃げるようにスタートし、受験勉強のストレスを発散するがごとく、ゴールになだれ込んだ。
◇
本格的に、芝居の稽古が始まった。
休み時間中にるんが職員室に行くと、花澤先生が部の設立の許可が下りたと嬉しい報告をしてくれ、使っていない教室を部室として用意してくれた。
去年まで何らかの部が使用していた教室は、去年の終わりに廃部となり、今まで使われていなかった。
最後に片付けたらしく散らかってはいなかったが、それでも長い間使われていなかったので埃のたまっている箇所があった。
軽く埃を掃ってから、稽古を始める。朱理の役はいなくてもたいして支障をきたさないので、とりあえず三人の役者で稽古を進めた。
キャスティングは、私が竜神様=若い娘で、舞が私に恋をしてしまう村人。つまり、男役である。
脚本を書き、キャスティングをした張本人であるカオルは、舞の奥さん役だ。
るんはピアノを演奏するだけなので、部室にいても稽古を見学するだけだった。当たり前だけれど、部室にピアノは置かれていない。
「どう、私達の演技?」
一時間ほど稽古をして、一息入れようと床に座ると、舞が自信あり気にるんに問いかける。一番渋っていたくせに、やり始めたら一番張り切っているように見える。
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